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🎙️ 音声: ずんだもん / 春日部つむぎ(VOICEVOX)
2025年末のメモリ価格高騰は、単なる一時的な市場変動ではなく、AI需要によるDRAM供給構造の根本的なシフトが原因です。2026年も高値圏が続く可能性が高いため、「安くなるまで待つ」という戦略は現実的ではありません。代わりに、自分の用途・納期・予算を明確にした上で、「今すぐ必要な容量を確保する」「不要な容量は先送りする」「中古やDDR4延命を活用する」といった現実的なアプローチが求められます。本記事では、2025年末時点での価格データ、メモリ高騰の構造的要因、用途別の買い時判断基準、実現可能な構成案を提供し、読者が自分の状況に合わせた最適な選択ができるよう支援します。
2025年を通じて、PC向けメモリ(特にDDR5)の価格は、過去数年では考えられないレベルの急騰を記録しました。以下は、実際の市場データに基づいた価格推移です。
DDR5メモリの高騰例(32GBキット基準)
DDR4メモリの高騰例(32GBキット基準)
DDR5がより大きく値上がりしているのは、新しい規格であり、生産ラインがまだ限定的で、かつAIサーバー向けの高性能メモリ需要に引っ張られているためです。一方、DDR4は相対的に上昇率が低いものの、すでに陳腐化が進んでおり、将来の供給継続性に不安があります。
メモリ高騰は、自作PCユーザーだけでなく、完成品PCの市場にも大きな影響を与えています。大手PCメーカーが相次いで値上げを発表・実施しており、その規模は決して小さくありません。
さらに詳しく見ると、メモリ容量が大きいほど値上げ幅が顕著です。例えば、32GB搭載PCでは2~3.5万円、128GB搭載機では8~12万円の追加コストが発生しているケースも報告されています。これは、メモリがPC全体の価格に占める比率を大きく変えており、かつてのようにCPUやGPUが価格を決める時代から、メモリが支配的な要因になりつつあることを示しています。
メモリ高騰の影響は、メモリだけに留まりません。SSD(NAND フラッシュメモリ)も同様の供給逼迫に直面しており、2025年末から2026年初にかけて最大50%の値上げが報告されています。これは、メモリとNANDが同じDRAM・NAND製造メーカーによって生産されており、AIデータセンター需要によって両者の供給が圧迫されているためです。
つまり、自作PCを組む際には、メモリとSSDの両方で高騰の影響を受けることになり、ストレージとメモリを合わせると、PC全体の構成コストに占める割合が従来の約10~15%から25%前後に上昇しているのが現状です。
2024年から2025年にかけて、NVIDIA、AMD、Googleなどの大手テック企業がAI推論・学習用の大規模サーバーを大量導入し始めました。これに伴い、AI GPUに搭載される**HBM(高帯域幅メモリ)**と、サーバー向けの高性能DRAM需要が急激に増加しました。
HBMは通常のDDR5よりも製造難易度が高く、また利益率も大きく異なります。業界分析によると、DDR5の利益率が約20%であるのに対し、HBMは約60%と3倍近くになります。半導体メーカーの経営判断としては、同じウェハ(シリコン基板)を使うなら、利益率の高いHBMやサーバー向けDRAMを優先するのは当然の流れです。
SK hynixの予測によると、DRAM需要に占めるサーバー向けの比率は以下のように変化するとされています。
つまり、わずか5年間で、サーバー向けがコンシューマ向けを上回るようになるということです。このシフトは、単なる需要の増加ではなく、メーカーの生産能力配分そのものの根本的な変化を意味しています。
さらに具体的には、OpenAIの「Stargate」計画などの大型AI投資では、月間最大90万枚のDRAMウェハーを確保することが議論されています。世界全体のDRAM生産能力が月間約225万枚であることを考えると、この一つのプロジェクトだけで世界全体の約40%のDRAMウェハ生産能力を占める可能性があります。
2022~2024年前半にかけて、メモリは過剰供給と価格低迷が続き、各メーカーは設備投資と生産を抑制していました。その時期に、メーカーは安全在庫も薄くしていたのです。
ところが、2024年後半のAIブーム急加速により、需要が急激に増加しました。新しい工場やラインの立ち上げには数年かかるため、短期~中期では供給能力の制約が非常に強くなり、これが価格高騰の主要な要因になっています。
メーカーが「2026年以降も供給不足が続く可能性がある」とコメントしているのは、この立ち上げ遅延の現実を反映しているのです。
2025年12月、Micronはコンシューマ向けメモリ・ストレージ事業からの撤退を発表し、Crucialブランドの製品は2026年2月で出荷終了予定とされています。これは、DRAM三社(Samsung、SK hynix、Micron)の中から一社が撤退することを意味し、競争環境がさらに厳しくなることを示唆しています。
撤退の背景には、やはりAI向けメモリへの経営資源集中があります。Micronは、利益率の低いコンシューマ向けメモリよりも、HBMやサーバー向けメモリへの投資を優先する経営判断をしたわけです。
複数の業界調査会社やメーカーのコメントを総合すると、2026年のメモリ価格についての見通しは以下の通りです。
2026年前半~中盤の見通し
本格的な正常化時期
つまり、「2025年末に高いから、2026年春~夏には安くなるだろう」という期待は、現在の市場見通しとしては根拠に乏しいということです。むしろ、2026年も高値圏が続く可能性が高く、本格的な値下がりを期待するなら、2027年以降を視野に入れる必要があります。
NAND側の見通しも同様に厳しいものです。2026年のNAND需給見通しとしては、以下が予測されています。
つまり、SSDもメモリと同じく供給不足が続き、価格上昇圧力が2026年を通じて続くということです。
メモリ高騰時代だからこそ、自分の状況を正確に把握した上で、「今買う」「待つ」「構成を変える」を判断する必要があります。以下は、用途別・状況別の判断基準です。
今買うべきゲーマーの条件
このような層では、高騰局面でも16GB→32GBへの増設がPCの実用性に直結するため、メモリ購入の優先度は高いです。
待つ選択肢を取りやすいゲーマーの条件
クリエイティブ用途は、メモリ需要が非常に用途依存的です。
4K動画編集の場合
このような場合は、32GB→64GBへのアップグレードが直接的に生産性向上に繋がるため、高騰局面でも購入の正当性があります。
RAW現像・Photoshop高解像度レタッチの場合
このような場合は、現在の構成で十分であり、メモリ購入を先送りする選択肢が取りやすいです。
今買うべき層
待つ選択肢を取りやすい層
メモリ高騰を踏まえ、現実的で実現可能な自作PC構成案を、予算別に3パターン提案します。価格は2025年12月時点の秋葉原・Amazon実売平均を参考にしており、メモリ高騰を反映した水準になっています。
このパターンは、ブラウザ・Office・動画視聴など、日常的な作業がメインで、ゲームは軽いインディータイトル程度という層を想定しています。
| パーツ | 製品例 | 価格 |
|---|---|---|
| CPU | AMD Ryzen 5 7600 | 約3万円 |
| マザーボード | B650 チップセット | 約2万円 |
| メモリ | DDR5-6000 32GB (16GB×2) | 約3万円 |
| GPU | RTX 4060 | 約4万円 |
| SSD | 1TB NVMe M.2 | 約1.5万円 |
| 電源 | 650W 80+ Bronze | 約1万円 |
| ケース | ミドルタワー | 約0.5万円 |
| 総額 | 約15万円 |
このパターンのポイント
このパターンは、フルHD~1440p高設定でのゲーミング、4K 30fps程度の動画編集、RAW現像など、中程度の負荷に対応したい層を想定しています。
| パーツ | 製品例 | 価格 |
|---|---|---|
| CPU | AMD Ryzen 7 7700X | 約5万円 |
| マザーボード | X670 チップセット | 約3万円 |
| メモリ | DDR5-6000 32GB (16GB×2) | 約3万円 |
| GPU | RTX 4070 Ti | 約10万円 |
| SSD | 2TB NVMe M.2 | 約3万円 |
| 電源 | 850W 80+ Gold | 約1.5万円 |
| ケース | フルタワー | 約1.5万円 |
| 総額 | 約27万円 |
このパターンのポイント
このパターンは、4K以上の動画編集、3Dレンダリング、ローカルAI推論など、高い性能が必須な層を想定しています。ただし、64GB メモリの採用については、現在の価格水準を考慮した選択を迫られます。
| パーツ | 製品例 | 価格 |
|---|---|---|
| CPU | AMD Ryzen 9 7950X3D | 約10万円 |
| マザーボード | X670E チップセット | 約4万円 |
| メモリ | DDR5-6000 32GB (16GB×2) ※64GB検討時は6~7万円追加 | 約3万円 |
| GPU | RTX 4090 | 約20万円 |
| SSD | 2TB NVMe M.2 | 約3万円 |
| 電源 | 1000W 80+ Platinum | 約2万円 |
| ケース | ハイエンドケース | 約2万円 |
| 総額(32GB) | 約44万円 | |
| 総額(64GB) | 約50万円以上 |
このパターンのポイント
メモリ容量の判断
DDR4 vs DDR5の選択
在庫・納期の確認
メモリ購入を先送りすることを選択した場合、以下のような具体的な代替案が考えられます。
現在DDR4環境を使用しており、CPU・GPUはまだ十分な性能がある場合、DDR4のままCPU/GPUだけを更新する戦略が有効です。
例えば、Ryzen 5 3600 + DDR4-3200 16GBの環境から、Ryzen 7 5700X + DDR4-3600 16GB への交換なら、メモリはそのまま流用でき、CPU性能を大幅に向上させることができます。ただし、AM4ソケットは2025年で事実上のサポート終了となるため、この戦略は「1~2年の繋ぎ」という位置づけになります。
メモリ増設よりも手軽な改善として、以下の施策が考えられます。
これらの施策は、メモリ増設ほどの劇的な改善は期待できませんが、数千円の投資で一定の改善が得られる点が利点です。
重い編集やAI処理をクラウドワークステーション・レンダーファームにオフロードする戦略も選択肢です。
これらのサービスは月額課金が必要ですが、ローカルハードウェア投資を先送りしながら、必要な機能を得られる利点があります。
2025年末時点で、中古PC市場では比較的手頃な価格でメモリを多く搭載したモデルが流通しています。例えば、Core i7搭載のデスクトップが16,500~30,580円程度で入手でき、メモリ8~16GB搭載のものが一般的です。
新規自作ではなく、中古PCを購入してメモリを増設する戦略も、メモリ高騰時代では現実的な選択肢になります。ただし、以下の点に注意が必要です。
メモリ購入を先送りする場合、または「安くなったら買う」という戦略を取る場合、価格トレンドを継続的に追跡することが重要です。以下は、実際に活用できるモニタリング手法です。
Amazon、秋葉原オンラインショップなどで、以下のツールを活用して価格アラートを設定します。
具体的には、以下のような表を作成して、価格推移を記録します。
| 日付 | 製品名 | 価格 | ショップ | 前週比 |
|---|---|---|---|---|
| 2025/12/17 | DDR5-6000 32GB | 69,000円 | Amazon | - |
| 2025/12/24 | DDR5-6000 32GB | 71,000円 | Amazon | +2,000円 |
| 2025/12/31 | DDR5-6000 32GB | 68,000円 | 秋葉原 | -3,000円 |
このような記録を続けることで、「短期的なトレンド」「底値の水準」「買い時の目安」が見えてきます。
DRAM・NANDメーカーの値上げ情報をフォローすることで、将来の店頭価格をある程度予測できます。
これらのニュースが出た場合、数週間~数ヶ月後に小売価格に波及する傾向があります。月1回程度、業界ニュースをチェックして、将来の価格トレンドを予測することが重要です。
メモリ購入を決断した場合、以下のチェックリストに従って、最適な製品選択と購入タイミングを判断してください。
自作PCが最適とは限らない場合もあります。メモリ高騰時代だからこそ、BTO(Build To Order)やメーカー完成品との比較も重要です。
メモリ高騰により、メーカー完成品の値上げが相次いでいます。一方、BTOショップ(ドスパラ、フロンティア、マウスコンピュータなど)は、大口仕入れのため一時的には「自作より割安なメモリ単価」が維持される場面もあります。
具体的な比較方法:
例えば、自作で32GB DDR5を3万円で購入する場合と、BTO製品に同じメモリが搭載されている場合の単価差を比較します。
2025年12月時点で、BTOショップが実施しているキャンペーンの例:
これらのキャンペーンを活用することで、新規自作よりも手頃な価格で高性能PCを入手できる可能性があります。
A: 新規自作ならDDR5一択です。理由は以下の通り:
ただし、既存のDDR4マザーボードがあり、CPUだけ交換する場合は、DDR4を継続利用する選択肢もあります。
A: はい、2025年末時点では32GBをお勧めします。理由:
ただし、本当に16GBで十分な用途(事務作業のみ)なら、16GBでコストを抑える選択肢もあります。
A: 以下の場合に限定されます:
それ以外の場合は、32GBでスタートして、必要に応じて後から増設する戦略が現実的です。
A: 以下の目安を参考にしてください:
ただし、待つ間に他のパーツ(GPU・CPUなど)も値上がりする可能性があるため、「待つ」は総合的に判断する必要があります。
メモリ価格高騰時代は、かつてのように「待てば安くなる」という単純な戦略では通用しません。代わりに、以下のステップで自分の状況に合わせた最適な判断をしてください。
ステップ1:自分の状況を把握する
ステップ2:「今買う」「待つ」を判断する
ステップ3:購入方法を選択する
ステップ4:長期的な視点を持つ
メモリ高騰は、確かに自作PCユーザーにとって厳しい環境です。しかし、正確な情報と現実的な判断があれば、最適な選択は十分に可能です。本記事の情報を参考に、あなたのPCライフに最適なソリューションを見つけていただければ幸いです。
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