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フリーランスエンジニアが2026年に絶対知るべき確定申告5つのポイント:定額減税・インボイス完全対応

👤 いわぶち 📅 2025-12-11 ⭐ 4.8点 ⏱️ 18m

ポッドキャスト

🎙️ 音声: ずんだもん / 春日部つむぎ(VOICEVOX)

📌 1分で分かる記事要約

  • 2026年2月16日〜3月16日が確定申告期間。2025年分(令和7年分)の所得をこの期間に申告する必要があります
  • 定額減税は2024年からの制度。2026年申告時点での継続有無は国税庁の最新情報で確認が必須です
  • インボイス制度下での2割特例が重要。免税から課税事業者になる場合、2027年から簡易課税を使うには2026年12月31日までの届出が必須です
  • freeeとやよいの青色申告は初心者向けの定番ツール。スマホ完結か従来型か、自分の運用スタイルで選択します
  • 営業経費・SNS運用費・開発環境整備費など、エンジニア特有の経費を正確に計上することで節税効果が大きく変わります

📝 結論

フリーランスエンジニアの2026年確定申告は、「定額減税の仕組み理解」「インボイス制度への対応」「必要経費の正確な計上」の3つが成功の鍵です。申告期限の2026年3月16日に向けて、今から会計ソフトの導入と日々の記帳習慣を整えることで、税務調査リスクを減らし、最大限の節税効果を実現できます。


はじめに:2026年確定申告が「入門者にとって複雑になった理由」

2025年も終盤。来年の確定申告シーズンを控えて、フリーランスエンジニアの皆さんは「今年はどう申告しよう」と考え始める時期です。

ただし、2026年の確定申告は、前年までとは異なる複雑さを持っています。なぜか?

  1. 2024年から始まった定額減税の影響が2025年分にも続く(継続の可否は未確定)
  2. インボイス制度が本格化し、2割特例の適用期限が近づいている
  3. 確定申告書の様式が毎年微修正されており、去年の様式をそのまま使えない
  4. エンジニア特有の経費(クラウドサービス、開発環境、SNS運用費)の計上ルールが曖昧で、税務調査時に指摘されやすい

本記事は、確定申告がまったくわからない初心者向けに、2026年申告で必ず押さえるべき5つのポイントを、具体例を交えて解説します。税理士に頼る前に、自分で最低限の知識を持つことで、余計な手数料を払わずに済み、かつ税務リスクも減らせます。


1. 2026年確定申告の「スケジュール」を完全把握する

申告期間:2026年2月16日(月)〜3月16日(月)

フリーランスエンジニアが2025年分(令和7年分)の所得を申告する期間は、**2026年2月16日(月)から3月16日(月)**です。

この日程は、国税庁の基本ルール「2月16日〜3月15日(ただし土日祝日の場合は翌平日)」に基づいており、2026年は3月15日が日曜日のため、翌月曜日の3月16日までが期限となります。

申告方法は3通り:

  • 税務署窓口への直接提出:営業日の8:30〜17:00に持参
  • 郵送による提出:3月16日(月)の消印有効で受け付け
  • e-Tax(電子申告):24時間提出可能。マイナンバーカード方式が主流

初心者向けには、e-Taxの「確定申告書等作成コーナー」を使う方法が最も簡単です。質問形式で進めていくだけで、その年の申告書が自動生成されます。

還付申告は1月1日から受付開始

源泉徴収税が多かった、または経費をたくさん計上して所得が下がった場合、**還付金を受け取る申告(還付申告)**ができます。

この還付申告は、2026年1月1日から提出が可能です。つまり、2月16日を待たずに、1月中に申告を完了させて、還付金をいち早く受け取ることができます。

フリーランスエンジニアの場合、特に以下のケースで還付が発生しやすいです:

  • SES・準委任契約で源泉徴収されている:毎月の報酬から10.21%が源泉徴収されているため、確定申告で所得が低く出ると還付される
  • 開業初年度で経費が多い:PC購入、開発環境整備、セミナー参加費などで経費がかさむと、所得が減り還付につながりやすい
  • 複数プラットフォームからの入金がある:GitHub Sponsors、note、アフィリエイトなど、一部が源泉徴収されていると還付対象になることがある

納税期限:2026年3月16日(月)

確定申告書の提出期限と同じく、**所得税・復興特別所得税の納付期限も2026年3月16日(月)**です。

納税額がある場合、この日までに納付する必要があります。納付方法は:

  • 振替納税:事前に申し込むと、4月下旬(予定)に指定口座から自動引き落とし
  • クレジットカード納付:国税庁の納付サイトから手数料を払って納付
  • 銀行窓口での納付:納付書を持参して現金納付
  • コンビニ納付:QRコード付き納付書でセブン-イレブン等で納付

振替納税は最も楽な方法です。申し込みは前年の3月15日までが原則ですが、初めての申し込みの場合は申告書提出と同時に申し込むことも可能です。

青色申告承認申請の期限:2026年3月15日

2026年分(2027年申告)から青色申告に切り替えたい場合、承認申請書の提出期限は2026年3月15日です。これは確定申告期限より1日早いため、注意が必要です。

青色申告のメリットは大きく、最大65万円の青色申告特別控除が使えるため、所得税を大幅に削減できます。


2. 定額減税の「仕組み」を理解する(2026年申告での扱い)

定額減税とは何か

2024年から導入された定額減税は、所得税・住民税から一定額を直接控除する制度です。物価高対策として実施されました。

基本的な減税額(2024年分):

  • 本人:所得税3万円 + 住民税1万円 = 合計4万円
  • 配偶者:同じく4万円
  • 扶養親族1人:同じく4万円

つまり、配偶者と子ども1人の3人家族なら、合計12万円の減税です。

2026年申告時点での「定額減税の継続有無」は未確定

重要な注意点:2026年申告時点で、定額減税が2025年分(2026年申告)でも継続されるかどうかは、現時点で確定していません。

定額減税は「物価高対策の一時的措置」として設計されており、恒久制度ではないため、以下のいずれかが考えられます:

  1. 2025年分も同じ内容で継続される
  2. 内容が変更される(減税額が減る、対象者が限定されるなど)
  3. 終了される(2024年限りで廃止)

この判断は、2025年末の税制改正大綱と国税庁の公式発表で明らかになります。記事執筆時点では、国税庁の「タックスアンサー」や「確定申告特設ページ」で最新情報を確認することが必須です。

給与所得者と事業所得者での扱いの違い

フリーランスエンジニアの中には、会社員との兼業や過去の給与所得がある人も多いでしょう。定額減税の扱いは、所得の種類により異なります。

給与所得がある場合(会社員との兼業):

  • 会社の年末調整で、給与から定額減税が控除される
  • 控除しきれなかった分(例:月額控除では賄いきれない場合)を確定申告書の専用欄に記入して精算
  • 事業所得と合算した「合計所得金額」で、最終的な税額が決まる

事業所得のみの場合(完全フリーランス):

  • 確定申告書で計算された所得税額から、定額減税額を直接控除
  • e-Taxを使えば、減税額の計算が自動化される

2026年申告書での記載方法

2026年の確定申告書様式では、定額減税に関する欄が設けられる可能性があります。具体的には:

  • 「定額減税額」欄:年末調整で控除された金額、または申告時に控除する金額を記入
  • 「減税額計算」欄:本人・配偶者・扶養親族の数に応じた減税額の自動計算

ただし、確定申告書の様式は毎年国税庁が公表するため、必ず「令和7年分」と明記された最新版をダウンロードしてください。前年の様式をそのまま使うと、欄の位置や計算方法が異なり、申告が受け付けられない可能性があります。


3. インボイス制度と「2割特例」の期限を見落とさない

インボイス制度の現状(2026年時点)

2023年10月に開始したインボイス制度は、2026年の時点でも継続しており、廃止や大幅な変更は予定されていません。

インボイス制度の核心:

消費税の仕入税額控除を受けるには、**適格請求書発行事業者(インボイス登録事業者)**からの請求書が必要になりました。

フリーランスエンジニアの場合、以下のようなケースで影響を受けます:

  • SES・準委任契約で法人クライアントと取引:クライアント側が仕入税額控除を受けるため、インボイス登録を要求されやすい
  • 複数のエージェント経由で案件を受注:エージェント側が課税事業者なら、インボイス登録済みの請求書を求める傾向が強い
  • 自社サービス・SaaS・同人活動で消費税課税対象:売上が1,000万円を超えると消費税申告が必要になり、インボイス登録が実務上必須に近い

免税事業者から登録した場合の「2割特例」

免税事業者だったフリーランスが、インボイス登録をした場合、消費税の納税額を「売上税額の2割」に簡便化できる特例があります。

2割特例の適用条件:

  • インボイス登録を受けた日から起算して、2年間(最大)
  • または、登録初期の免税事業者が課税事業者になった場合の初年度

具体例:

売上1,000万円(消費税率10%)の場合:

  • 通常の本則課税:売上税額100万円 - 仕入税額(例:30万円)= 納税額70万円
  • 2割特例:売上税額100万円 × 20% = 納税額20万円

納税額が70万円から20万円に減り、50万円の節税になります。

2026年に重要な「簡易課税への切り替え期限」

2割特例は便利ですが、永遠に使える制度ではありません。2026年中に簡易課税制度への切り替えを検討する必要があります。

重要な期限:

2027年から簡易課税を適用したい場合、2026年12月31日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。

この期限を過ぎると、2027年は2割特例が使えず、本則課税(売上税額 - 仕入税額)で計算しなければならず、納税額が大幅に増える可能性があります。

簡易課税制度との選択判断

簡易課税は、仕入税額を「売上の一定割合」として計算する制度です。フリーランスエンジニアの場合、業種により異なります:

エンジニアの業種分類:

  • 第3種事業(卸売業・小売業以外の事業):仕入税額 = 売上税額 × 50%
  • 第5種事業(サービス業):仕入税額 = 売上税額 × 50%

多くのエンジニアは第5種に該当し、売上税額の50%が仕入税額として認められます。

判断のポイント:

  • 実際の仕入税額が少ない場合(PC購入、クラウド利用料が少ない):簡易課税で売上の50%を控除できる方が有利
  • 実際の仕入税額が多い場合(高額PC購入、クラウド利用料が多い):本則課税で実額控除する方が有利

2026年中に、自分の売上・経費・仕入税額を集計して、2027年以降の最適な制度を判断することが重要です。


4. 初心者向け会計ソフト選択:freee vs やよいの青色申告

会計ソフト選択が「確定申告の難易度」を大きく左右する理由

確定申告を自分で行う場合、会計ソフトの選択が成功のカギになります。なぜなら、ソフトの使いやすさで、日々の記帳習慣が変わるからです。

記帳が習慣化しないと、年末になって「1年分の領収書をまとめて入力する」という地獄のような作業が待っています。一方、毎日10分ずつ記帳する習慣があれば、確定申告書は30分で完成します。

freee会計(個人事業主プラン)

特徴:質問に答えるだけで確定申告書が作成できる

freeeの最大の特徴は、会計知識がなくても、〇×クイズのような質問に答えていくだけで確定申告書が完成する設計です。

freeeの強み:

  1. スマホ完結が可能

    • レシートをスマホカメラで撮影すると、OCR技術で自動認識
    • 撮影した日付・金額・相手先が自動入力され、勘定科目も AI が候補提示
    • スマホアプリから、記帳から確定申告書作成まで全て完結
  2. 銀行口座・クレジットカード連携

    • 事業用の銀行口座・カードをfreeeに連携すると、入出金明細が自動取得
    • 取引内容の自動分類により、記帳作業が激減
  3. インボイス対応

    • 適格請求書の発行機能を備えており、インボイス登録済みフリーランスが取引先に請求書を送付可能
    • 請求書データから売上仕訳が自動生成
  4. 定額減税・インボイス制度への自動対応

    • 毎年の税制改正に合わせてアップデートされるため、2026年の定額減税・インボイス関連の様式変更に自動対応

freeeの料金(参考:2025年時点):

  • スタータープラン:月額1,000円程度(基本機能、仕訳数制限あり)
  • スタンダードプラン:月額2,000円程度(青色申告・消費税申告対応)
  • プレミアムプラン:月額3,000円程度(税理士相談・電話サポート付き)

初心者向けの評価:★★★★★

会計知識ゼロでも、スマホだけで確定申告を完結させたい人向け。

やよいの青色申告オンライン

特徴:従来の会計ソフトの使いやすさを追求

やよいの青色申告オンラインは、ブラウザで動作し、従来の会計ソフトの操作感を保ちつつ、クラウド型の利便性を備えたソフトです。

やよいの強み:

  1. ブラウザ型で、インストール不要

    • Windows・Mac・Linuxなど、OSを選ばず使用可能
    • クラウド保存により、どのパソコンからでもアクセス可能
  2. 従来型の帳簿・仕訳に基づいた設計

    • 「仕訳帳」「総勘定元帳」「現金出納帳」など、会計の基本を学びながら使える
    • 会計知識を身につけたい人向け
  3. 初心者向けのサポートが充実

    • ユーザーの口コミでは「使いやすい」との評価が多い
    • チャット・メールサポート(セルフプランは有料)
  4. Misoca連携でインボイス対応

    • 弥生の請求書サービス「Misoca」と連携
    • Misocaで適格請求書を発行し、データをやよい側に連携

やよいの料金(参考:2025年時点):

  • セルフプラン:年額8,800円程度(電話サポートなし)
  • ベーシックプラン:年額14,300円程度(電話サポート付き)
  • トータルプラン:年額24,000円程度(仕訳代行サービス付き)

初年度は無償〜大幅割引のキャンペーンが多い。

初心者向けの評価:★★★★☆

会計の基本を学びながら、ブラウザで気軽に記帳したい人向け。

freee vs やよい:選択のポイント

観点freeeやよい
スマホ運用◎ 完全対応、レシート撮影で自動入力△ ブラウザ型のため、PC推奨
会計知識の学習△ 質問形式で完結するため、仕訳を学ばない◎ 従来型の帳簿構成で学べる
初期導入の手軽さ◎ 質問に答えるだけで完成○ やや学習曲線あり
料金月額制(年間15,000円程度)年額制(初年度無償〜割引多い)
インボイス対応◎ freee内で請求書発行可能○ Misoca連携で対応
複数プラットフォーム対応◎ PC・スマホ・タブレット○ PC・ブラウザ中心

初心者向けのおすすめ:

  • スマホだけで完結させたい、PC操作が苦手freee
  • ブラウザで気軽に使いたい、会計知識も学びたいやよい
  • 複数の案件・エージェント・プラットフォームを管理したいfreee(銀行連携の自動化が強力)

5. フリーランスエンジニア特有の経費を完全マスター

経費計上の基本原則

所得税法では、経費として認められるのは以下の条件を満たす支出です:

  • 事業の遂行上、直接必要な支出
  • 支出の事実と内容を示す証拠資料(領収書・レシート・請求書等)がある
  • 私的支出と明確に区別できる

エンジニア特有の支出は、この原則に基づいて判断されます。

開発環境整備費(クラウド・SaaS・サーバー)

具体例:

  • GitHub、GitLab、Bitbucketなどのプライベートリポジトリ有料プラン
  • AWS、GCP、Azureなどのクラウド利用料
  • レンタルサーバー、VPS、ドメイン・SSL証明書費用
  • CI/CDサービス(CircleCI、GitHub Actions有料枠等)

計上区分: 通信費 / 支払手数料 / ソフトウェア利用料

注意点:

クラウドサービスの利用料は、事業用と私用が混在しやすいため、事業利用割合を合理的に按分することが重要です。

例えば、GitHub Proプランを月額3,000円で契約していて、仕事用リポジトリが70%、プライベートプロジェクトが30%の場合:

  • 経費計上額 = 3,000円 × 70% = 2,100円

この按分基準をメモで残しておくと、税務調査時に説明しやすくなります。

開発用ソフトウェア・ライセンス

具体例:

  • IntelliJ IDEA、WebStormなどの有料IDE(年額200〜400ドル)
  • Adobe Creative Cloud(月額5,680円)
  • Figma、Sketch等のデザインツール有料版
  • API利用料、ログ解析ツール、DB管理ツールなどのサブスク

計上区分: 消耗品費 / ソフトウェア利用料 / 支払手数料

計上のポイント:

  • サブスク(月額・年額): 契約期間に応じて費用化。例えば年額契約なら、その年に全額経費計上可能
  • 買い切り型ライセンス: 10万円未満なら消耗品費、10万円以上なら減価償却資産として処理

開発用PC・周辺機器

具体例:

  • ノートPC、デスクトップPC(20万円程度)
  • モニター、キーボード、マウス、外付けストレージ(各1万円程度)
  • 検証用スマートフォン・タブレット(各10万円程度)

計上区分と方法:

  • 10万円未満: 消耗品費として一括計上
  • 10万円以上: 減価償却資産として処理
    • パソコン:耐用年数4年で毎年25%減価償却
    • 周辺機器:耐用年数5年で毎年20%減価償却

青色申告者の特例:

青色申告者であれば、30万円未満の資産は「少額減価償却資産の特例」で一括経費化が可能です(年間300万円までの上限あり)。

例えば、25万円のノートPCを購入した場合、通常は4年かけて減価償却されますが、この特例を使えば購入年に全額経費化できます。

注意点:

私用と兼用している場合(例:開発作業60%、プライベート40%)は、業務使用割合で按分します:

  • PC購入費25万円 × 60% = 15万円を経費計上

書籍・技術資料・オンライン教材

具体例:

  • プログラミング言語・フレームワークの技術書(各3,000〜5,000円)
  • クラウド・インフラ・セキュリティ関連の専門書
  • 有料技術記事、オンライン教材(Udemy、Coursera等)
  • 技術雑誌の定期購読

計上区分: 新聞図書費 / 研修費 / 研究費

判断のポイント:

  • 業務に直結する技術書:経費性が強い(例:今携わっているプロジェクトで使うフレームワークの本)
  • 汎用的な知識習得:経費性が弱い可能性(例:「プログラミング一般」「数学の基礎」など、遠い将来の学習)

税務調査では、「なぜこの本を買ったのか」を説明できることが重要です。

セミナー・勉強会・カンファレンス参加費

具体例:

  • 技術カンファレンス参加費(1万〜5万円)
  • オンラインセミナー・ウェビナー受講料
  • 有料コミュニティ・サロン会費(月額1,000〜10,000円)

計上区分: 研修費 / 教育訓練費 / 諸会費

注意点:

セミナー参加時の懇親会費は「交際費」に該当し、セミナー本体費用と区別して記録しておくと、内容が明確になります。

例えば、「技術カンファレンス参加費:5,000円」「懇親会費:3,000円」と分けて記帳すれば、税務調査時に「参加費は研修費、懇親会は交際費」と説明できます。

営業・交際費

具体例:

  • クライアント訪問・打ち合わせのための交通費
  • 見込み客との喫茶代・ランチ代
  • 既存クライアントへの手土産・贈答品

計上区分:

  • 交通費:旅費交通費
  • 飲食費:交際費 / 会議費
  • 贈答品:交際費

重要な注意点:

交際費は、相手先名・目的・日時を領収書の裏などに記入しておくことが極めて重要です。

例えば:

2025年10月15日 A社営業部長・佐藤太郎と打ち合わせ
件名:◯◯プロジェクト仕様書確認
場所:☕️カフェ△△
金額:2,500円

このように記録しておくと、「単なる私的な飲食」ではなく「営業目的の打ち合わせ」であることが明確になります。

SNS運用費・広告宣伝費

具体例:

  • X Premium、LinkedIn Premium等の有料プラン
  • Buffer、Hootsuite等のSNS管理ツール利用料
  • Facebook・Instagram・Google広告の出稿費
  • ポートフォリオサイト・ブログ制作・運営費

計上区分:

  • SNS有料プラン:通信費 / 支払手数料
  • SNS広告費:広告宣伝費
  • ポートフォリオサイト制作費:広告宣伝費

按分のポイント:

スマホ料金やインターネット回線など、私用と兼用する場合は、事業利用割合で按分します。

例えば、月額5,000円のスマホ代で、SNS運用が50%、プライベートが50%の場合:

  • 経費計上額 = 5,000円 × 50% = 2,500円

自宅兼事務所の家賃・光熱費(家事按分)

具体例:

  • 自宅の家賃のうち、仕事部屋として使用している面積割合分
  • 電気・ガス・水道料金のうち、PC・照明等の業務使用分
  • 自宅インターネット回線の業務利用分

計上区分:

  • 家賃:地代家賃
  • 電気・ガス・水道:水道光熱費
  • インターネット:通信費

家事按分の計算方法:

床面積による按分:

自宅が100㎡で、仕事部屋が20㎡の場合:

  • 家賃月額20万円 × (20㎡ / 100㎡) = 4万円を経費計上

使用時間による按分:

PC・照明の使用時間が、1日8時間中6時間が仕事の場合:

  • 電気代月額5,000円 × (6時間 / 24時間) = 1,250円を経費計上

税務調査で指摘されやすい項目なので、按分基準をメモで残しておくことが重要です。

会計ソフト・請求書発行ツール

具体例:

  • freee、マネーフォワード等の会計ソフト利用料
  • Misoca、請求書.com等の請求書発行ツール
  • クラウド型契約書管理サービス

計上区分: 通信費 / 支払手数料 / ソフトウェア利用料

重要性:

会計ソフトの利用料は、事業運営に直結する経費として、全額経費化されます。税務調査でも指摘されることはまずありません。

開業準備費・調査研究費(開業初年度向け)

具体例:

  • 独立前に受講したフリーランス向けセミナー
  • マーケット調査用の資料・書籍代
  • 開業前に購入した事業用PC、机・椅子

計上方法:

開業前の支出は、「開業費」として資産計上し、その後任意のタイミングで償却(費用化)することが認められています。

例えば、開業1年目に100万円の開業費があった場合:

  • 開業1年目:開業費100万円を資産計上
  • 開業2年目以降:任意のタイミングで「開業費償却」として経費化

多くのフリーランスは、開業1年目に全額償却して、初年度の所得を下げる戦略を取ります。


6. インボイス制度下での請求書・経費管理の実務

インボイス登録済みの場合:請求書発行ルール

インボイス登録済みのフリーランスエンジニアは、クライアントに対して適格請求書を発行する義務があります。

適格請求書に必須の項目:

  1. 発行者の氏名・住所
  2. 登録番号(例:T1234567890123)
  3. 取引年月日
  4. 取引内容
  5. 税率ごとの区分(10%、8%、非課税等)
  6. 税率ごとの消費税額
  7. 合計金額
  8. 受取人の氏名・住所

請求書発行ツールの選択:

  • freee: freee内で適格請求書を発行可能、データが自動で売上仕訳に連携
  • Misoca(やよい連携): 適格請求書発行機能を備え、やよい側に連携
  • 独自の請求書テンプレート: Excelやスプレッドシートで作成し、登録番号・税率区分を手動で記入

経費の仕入税額控除(消費税課税事業者向け)

消費税の課税事業者になると、経費に含まれる消費税を仕入税額控除することで、納税額を削減できます。

仕入税額控除の条件:

  1. インボイス発行事業者からの請求書等がある
  2. 請求書に登録番号が記載されている
  3. 帳簿に取引内容を記録している

具体例:

エージェント手数料55,000円(税抜50,000円 + 消費税5,000円)を支払った場合:

  • インボイス登録業者のエージェント:5,000円の仕入税額控除が可能
  • 免税業者のエージェント:控除不可(ただし経過措置で一部控除可)

7. 2026年申告「チェックリスト」:失敗を防ぐ

確定申告の時期が近づいたら、以下のチェックリストで準備状況を確認してください。

【11月〜12月:準備段階】

  • 2026年の申告期間(2月16日〜3月16日)を手帳に記入
  • 会計ソフト(freee or やよい)を導入し、初期設定を完了
  • 銀行口座・クレジットカードを会計ソフトに連携
  • インボイス登録の有無を確認、登録済みなら請求書発行ツールの設定
  • 2026年の定額減税継続有無について、国税庁サイトで最新情報を確認

【12月:決算準備】

  • 2025年1月〜12月の全ての取引を会計ソフトに入力
  • 領収書・レシート・請求書の整理・保存
  • 減価償却資産(PC等)の購入日・金額・耐用年数を確認
  • 家事按分の基準(床面積・使用時間等)をメモにまとめ、割合を計算
  • 青色申告か白色申告か、申告方式を決定
  • 青色申告の場合、帳簿(仕訳帳・総勘定元帳等)が完成しているか確認

【1月:還付申告・早期申告】

  • 源泉徴収税が多い場合、1月1日から還付申告を提出可能
  • 確定申告書等作成コーナーで試算し、納税額or還付額を概算
  • 納税額がある場合、振替納税の申し込み手続き

【2月16日〜3月16日:申告期間】

  • 国税庁サイトから「令和7年分」の確定申告書様式をダウンロード
  • e-Taxまたは税務署窓口で申告書を提出
  • 提出後、控えのPDFまたは受付印をもらった紙を保管
  • 納税額がある場合、3月16日までに納付

【3月16日以降:申告後の管理】

  • 確定申告書の控え、領収書、帳簿を7年間保存
  • 振替納税を申し込んだ場合、4月下旬の引き落としを確認
  • 2027年分のインボイス・消費税申告の方針を検討(2割特例 vs 簡易課税)

よくある質問(Q&A)

Q1:副業エンジニアで給与所得がある場合、確定申告は必要?

A:はい、必要です。

給与所得がある会社員が副業エンジニアの事業所得を得た場合、事業所得が20万円を超えると確定申告義務が発生します。

給与所得の年末調整と事業所得を合算して、確定申告書Bを提出する必要があります。

Q2:インボイス未登録のままでも大丈夫?

A:市場的には不利になりやすい。

2026年時点では、インボイス制度開始から3年が経過し、経過措置による仕入税額控除の割合が段階的に縮小しています。

クライアント側の負担が増すため、インボイス未登録フリーランスへの単価減額や取引条件の変更が進む可能性が高いです。

特にBtoB(法人取引)が中心のエンジニアは、登録を検討する価値があります。

Q3:2割特例と簡易課税、どちらを選ぶべき?

A:売上・経費規模で判断。

  • 2割特例が有利: 初年度で経費が少ない場合、2割特例で納税額を最小化し、翌年以降の簡易課税切り替えを検討
  • 簡易課税が有利: 実際の仕入税額が売上の50%を超える場合、本則課税で実額控除する方が有利

2026年中に、自分の売上・経費・仕入税額を集計して、2027年からの最適な制度を判断することが重要です。

Q4:freeeとやよい、どちらがおすすめ?

A:運用スタイルで選択。

  • スマホ中心、手軽さ重視:freee(レシート撮影で自動入力、スマホアプリで完結)
  • 会計知識を学びたい、ブラウザ中心:やよい(従来型の帳簿構成、初年度無償キャンペーン多い)

どちらを選んでも、毎日の記帳習慣を身につけることが最も重要です。

Q5:確定申告書の様式が毎年変わるのはなぜ?

A:税制改正と制度対応のため。

定額減税、インボイス制度、基礎控除の見直しなど、毎年の税制改正に伴い、確定申告書の欄や計算方法が微修正されます。

前年の様式をそのまま使うと、新しい欄に気づかず申告漏れになる可能性があるため、必ず「令和7年分」と明記された最新版をダウンロードしてください。


まとめ:2026年確定申告で成功するための5ステップ

  1. スケジュールを把握する

    • 申告期間:2026年2月16日〜3月16日
    • 還付申告:1月1日から受付開始
    • 簡易課税切り替え届出:2026年12月31日が期限
  2. 定額減税と基礎控除を理解する

    • 2026年分での継続有無は、国税庁の最新情報で確認
    • 給与所得と事業所得がある場合、合算して税額が決まる
  3. インボイス制度の期限を見落とさない

    • 2割特例は初期段階のみ適用可能
    • 2027年から簡易課税を使うなら、2026年12月31日までに届出
  4. 会計ソフトを導入し、日々の記帳習慣をつける

    • freee(スマホ完結)vs やよい(会計学習)で選択
    • 毎日10分の記帳で、年末の苦労が激減
  5. エンジニア特有の経費を正確に計上する

    • 開発環境整備費、SNS運用費、営業交際費など
    • 領収書・メモで事業関連性を説明できるようにする

これら5つのポイントを押さえることで、2026年の確定申告は、初心者でも自分で完成させることができます。

税理士に丸投げするのではなく、最低限の知識を持つことで、余計な手数料を払わず、かつ税務リスクも減らせます。

2025年のうちに会計ソフトを導入し、2026年の申告に向けて準備を始めましょう。

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