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AI生成画像のSNS投稿は違法?実在人物・キャラ・商用利用の法的ボーダーライン

👤 いわぶち 📅 2026-01-06 ⭐ 4.5点 ⏱️ 15m
AI生成画像のSNS投稿は違法?実在人物・キャラ・商用利用の法的ボーダーライン

ポッドキャスト

🎙️ 音声: ずんだもん / 春日部つむぎ(VOICEVOX)

📌 1分で分かる記事要約

  • 実在人物のAI加工は肖像権・パブリシティ権侵害:STU48メンバーへの無断水着加工事件は、削除要求と訴訟予告に発展。撮影有無を問わず、容姿を無断で改変・公開する行為は法的リスクが高い
  • キャラクター二次創作は著作権侵害:既存キャラを無断加工してSNS投稿するのは複製権・翻案権侵害。ただしクローズド環境(個人PC内)での私的使用なら許容
  • 公の場 vs 私的使用が分岐点:クローズド環境なら法的問題が少ないが、SNS投稿や商用利用は権利者に困りごとを生じさせ、削除要求につながる
  • AI生成画像の責任はユーザーにある:nano bananaなどのツールは商用利用を認めるが、著作権・肖像権侵害の責任は全面的に利用者が負う
  • 安全な利用は「〇〇風」ではなく「オリジナルの〇〇」:既存作品に依存しないプロンプト設計が、法的リスクを最小化する実務的な対策

📝 結論

AI生成画像の利用は、「誰が困るのか」を理解することが出発点です。実在人物の無断加工は肖像権侵害、キャラクターの二次創作は著作権侵害、そしてSNS投稿は「公の場での権利侵害」として法的措置の対象になります。一方、オリジナル指向のプロンプト設計と権利者への許可取得を意識すれば、AI生成画像は安全に活用できます。本記事では、実例を通じて法的ボーダーラインを明確にし、実装的な安全策を提示します。


現在進行形の問題:STU48事件から見えるリアル

2026年1月初旬、SNS上で衝撃的な事件が起きました。漫画家・田辺洋一郎氏がXのAIツール「Grok」を使い、アイドルグループSTU48のメンバー・工藤理子の写真を「首にマフラーを巻いてビキニを着せて」と指示し、水着姿の加工画像を投稿したのです。

この投稿に対し、同グループのメンバー・中村舞らが不快感を表明。事態は瞬く間に炎上し、1月5日にはSTU48の運営が公式サイトで声明を発表しました。その内容は極めて厳しいものでした。

メンバーの容姿を模したAI生成画像は、撮影の有無に関わらず肖像権及びパブリシティ権を著しく侵害する。無断投稿の即時削除を要求し、応じない場合は発信者情報開示請求や法的手段を検討する。

この声明は、単なる道徳的非難ではなく、法的措置を視野に入れた警告です。投稿者は削除と今後の自粛を余儀なくされました。

このニュースを見て、多くの人が「ええんかなって思ってた」と感じるかもしれません。AI技術が身近になり、誰でも簡単に画像を生成できるようになった時代。しかし、技術の民主化と法的責任は別問題です。


肖像権と著作権:何が違うのか

AI生成画像に関わる法的問題を理解するには、まず肖像権と著作権の違いを押さえることが不可欠です。

肖像権とは何か

肖像権は、実在する個人の顔や容姿を無断で利用されない権利です。これは以下の2つの側面を持ちます。

プライバシー権としての肖像権:個人の私生活を守る権利。自分の顔や容姿を勝手に撮影・公開されたくないという基本的な人格権です。

パブリシティ権:著名人や有名人が持つ、自分の肖像に経済的価値がある場合、その価値を独占する権利。アイドルやタレントは、自分の顔や容姿を商業的に利用する権利を持ち、これを無断で利用されると損害が生じます。

STU48事件は、まさにこのパブリシティ権侵害に該当します。アイドルメンバーの容姿は、グループの経済的価値と直結しており、無断で改変・公開することは、その価値を著しく損なう行為だからです。

著作権とは何か

一方、著作権は、創作物(文章、絵、音楽、映像など)の著作者が持つ権利です。重要なポイントは、キャラクター自体には著作権がないということです。

では、キャラクター関連で著作権が発生するのはいつか。それは、**キャラクターの具体的な表現(イラスト、デザイン、造形)**に対してです。

例えば、「少女漫画のキャラクターA」という概念には著作権がありませんが、その漫画に描かれた「Aのイラスト」には著作権があります。そのイラストを無断でコピーしたり、AIで加工したり、改変して投稿したりすれば、複製権(著作権法第21条)や翻案権(第27条)を侵害することになります。


3段階で理解する:実在人物 → キャラクター → AI生成画像

法的問題を体系的に理解するため、3つのケースを段階的に見ていきましょう。

ケース1:実在人物をAIで無断加工(STU48事件)

状況:有名人の写真をAIで改変し、SNSに投稿

侵害される権利:肖像権、パブリシティ権

法的リスク:★★★★★(最も高い)

理由

  • 著名人は「肖像の商業的価値」を持つため、無断利用は直接的な経済損失につながる
  • 撮影の有無を問わず、容姿を無断で改変・公開することは肖像権侵害
  • 特に水着などの性的・不適切な加工は、名誉毀損やプライバシー侵害としても問題化

実際の結果:削除要求、訴訟予告、発信者情報開示請求


ケース2:版権キャラクターを無断加工してSNS投稿

状況:人気アニメのキャラクターをAIで加工し、Xやインスタに投稿

侵害される権利:著作権(複製権・翻案権)

法的リスク:★★★★☆(高い)

理由

  • キャラクターの具体的な表現(イラスト)は著作物であり、著作権で保護されている
  • 無断での複製・改変・公開は、著作権法違反
  • 「二次創作」として許容される場合もあるが、SNS投稿は「公衆送信」に該当し、私的使用の範囲を超える

重要な分岐点:クローズド環境 vs 公開

ここが重要なポイントです。あなたが「クローズドな環境なら個人使用目的だからまだしも」と指摘した通り、加工画像を個人のPC内に保管するだけなら、著作権法第30条(私的使用)で許容されます

しかし、SNSで投稿すれば、その時点で「公衆への送信」となり、著作権侵害になります。権利者にとっても困りごとは明確です:

  • イメージの無断改変による評判悪化
  • 経済的価値の希薄化(公式グッズとの競合)
  • ブランド管理の困難さ

ケース3:テキストから生成した画像をブログのアイキャッチに商用利用

状況:nano bananaなどのAI生成ツールで画像を作成し、ブログ記事のアイキャッチとして使用(アクセス数や広告収入がある場合)

侵害される権利:著作権、肖像権、商標権(場合による)

法的リスク:★★★☆☆(中程度~高い)

理由

  • nano bananaの利用規約上、生成画像の所有権はユーザーに帰属し、商用利用も認められている
  • ただし、責任はユーザー側にある。ツールは単なるツールであり、著作権侵害の責任を負わない
  • プロンプトで「〇〇風」と指示すれば、既存作品に類似した画像が生成される可能性が高く、著作権侵害のリスクが生じる
  • 企業ロゴやブランド、著名人に似た顔が意図せず生成される場合もあり、商標権や肖像権侵害のリスクがある

実装的な安全策:プロンプト設計が鍵

ここが実務的に最も重要なポイントです。AI生成画像の商用利用を安全にするには、プロンプト設計を工夫することが不可欠です。

危険なプロンプト例:

  • 「〇〇のようなキャラクター」
  • 「〇〇風の美女」
  • 「有名ブランドのロゴ風」

安全なプロンプト例:

  • 「オリジナルの〇〇というコンセプトのキャラクター」
  • 「独自設定の美女キャラ」
  • 「オリジナルのロゴデザイン」

既存作品に依存しない、完全にオリジナルな指示を心がけることで、著作権侵害のリスクは大幅に低下します。


公の場 vs 私的使用:ボーダーラインはどこか

法的責任を判断する上で、公開の有無が極めて重要な分岐点になります。

私的使用が認められるケース

著作権法第30条により、以下の場合は著作権侵害にはなりません:

  • 個人のPC内に保管:自分のコンピュータに加工画像を保存するだけ
  • 家族内での閲覧:家族だけで見る目的での複製
  • ローカルな友人グループでの共有:小規模で閉じた環境での利用

この場合、権利者に実害が生じないため、法的問題は生じにくいです。

公の場での公開がアウトな理由

SNS投稿やブログ公開は、以下の理由で著作権侵害になります:

  • 不特定多数への公衆送信:SNSは全世界に向けた発信であり、「公衆」への送信に該当
  • 権利者への実害:イメージ悪用、経済的損失、ブランド価値の低下
  • 削除要求の対象:権利者が発見すれば、削除要求や法的措置につながる

STU48事件も、まさにこれです。クローズドな環境での個人的な加工なら問題にならなかったかもしれませんが、Xという公の場での投稿だったため、運営側が法的措置を講じることになったのです。


AI生成画像の法的責任:ツール側ではなくユーザーが負う

ここで重要な誤解を解きましょう。

「AIが生成した画像なら、AI企業が責任を持つのでは?」

答え:いいえ、全面的にユーザーが責任を負います。

nano bananaなどのAI生成ツールの利用規約には、明確に書かれています:

  • 生成画像の所有権はユーザーに帰属する
  • 商用利用は認められている
  • ただし、著作権・肖像権・商標権侵害の責任はユーザーが負う

つまり、AIはあくまで「生成ツール」であり、最終的な判断と責任は人間にあるということです。

これは当然の考え方です。なぜなら、ユーザーがプロンプトを入力する段階で、「何を生成するか」を指示しているからです。もし「〇〇のような画像」と指示して、既存作品に類似した画像が生成されたとしても、その指示を出したのはユーザー自身です。

責任の所在

  • ツール企業:生成技術の提供のみ
  • ユーザー:生成内容の最終判断と法的責任

実装的ガイド:安全なプロンプト設計

では、AI生成画像を安全に利用するには、どうすればいいのか。実務的な対策を紹介します。

プロンプト設計の3つのポイント

1. 既存作品への参照を避ける

危険:「鬼滅の刃のキャラクターのような少女」 安全:「和風の髪飾りをした、独自設定の少女キャラクター」

既存作品名を明示すれば、AIはその作品に類似した画像を生成しやすくなります。代わりに、コンセプトや特徴を言葉で説明する方が、オリジナリティが高まります。

2. スタイルは「〇〇風」ではなく「オリジナルの〇〇」

危険:「油絵風」「アニメ風」「漫画風」 安全:「オリジナルの油絵スタイル」「独自のアニメーション表現」

スタイル指定も、既存の有名な表現を避け、「独自の」「オリジナルの」という前置きを付けることで、既存作品との類似性を低下させます。

3. ブランド・ロゴ・著名人への言及を避ける

危険:「Appleのロゴ風」「有名女優のような顔」 安全:「テック企業のオリジナルロゴ」「架空の人物の顔」

企業ロゴや著名人に言及すれば、商標権や肖像権侵害のリスクが高まります。代わりに、概念的な説明で十分です。

実例:ブログアイキャッチの安全な生成方法

あなたが実践している「nano bananaでテキストから起こすのはやってる。記事のアイキャッチにね」というやり方は、正しく実装すれば非常に安全です。

安全なプロンプト例(ブログ記事「AI生成画像の法的問題」のアイキャッチ):

A minimalist illustration of a person holding a scale, 
with a digital image on one side and a legal document on the other. 
Soft pastel colors, modern flat design style, original artwork.

このプロンプトのポイント:

  • 既存作品やキャラクターへの言及がない
  • 「original artwork」と明示して、オリジナル指向を示している
  • 概念的(スケール、法律文書)で具体的な既存作品に依存していない

このような設計なら、著作権侵害のリスクはほぼゼロに近いです。


削除要求から訴訟まで:現実的な結果

「でも、実際に何が起こるのか」と思う人も多いでしょう。STU48事件から学べる、現実的なプロセスを見てみましょう。

段階1:削除要求

権利者(この場合はSTU48運営)が侵害を発見すると、まず削除要求を出します。

  • SNSプラットフォームへの通報
  • 投稿者への直接的な削除要求
  • 公式声明での警告

STU48の場合、公式サイトで声明を発表し、「無断投稿の即時削除を要求」と明記しました。

段階2:発信者情報開示請求

削除に応じない場合、権利者は発信者情報開示請求を行います。

  • プロバイダー責任制限法に基づき、投稿者の個人情報(氏名、住所、メールアドレスなど)をSNS企業に開示させる
  • 投稿者は匿名でいられなくなる

STU48の声明では、「削除に応じない場合は発信者情報開示請求を検討する」と明記されています。

段階3:民事訴訟

最終的には、投稿者を相手取った民事訴訟に進む可能性があります。

  • 損害賠償請求(慰謝料、経済的損失)
  • 弁護士費用
  • 裁判期間中の社会的影響

権利者が「困る」具体的な理由

ここまでの説明で「著作権侵害」「肖像権侵害」という言葉が出てきましたが、なぜ権利者は困るのか、具体的に理解することが重要です。

実在人物の場合

  • プライバシー侵害:自分の容姿を勝手に改変されるのは、精神的苦痛
  • 名誉毀損:特に性的な加工は、本人や周囲のイメージを著しく損なう
  • 経済的損失:パブリシティ権の無断利用で、本来得られるはずの報酬を失う

STU48メンバーの場合、アイドルとしての「容姿」は商品であり、その価値を無断で利用されることは、直接的な経済損失です。

キャラクターの場合

  • イメージ悪用:不適切な加工により、キャラクターのイメージが毀損される
  • 経済的価値の希薄化:公式グッズやメディアとの競合、ブランド価値の低下
  • ブランド管理の困難さ:無数の非公式加工版が出回ることで、公式版の区別がつかなくなる

権利者は、莫大な投資をしてキャラクターを育成しているため、無断加工版の拡散は深刻な問題なのです。


まとめ:「許可取得」と「オリジナル指向」の2軸

AI生成画像を安全に利用するための、最終的なメッセージは シンプルです。

軸1:権利者への許可取得

可能な限り、権利者から明示的な許可を得ることが最も安全です。

  • キャラクターの二次創作なら、公式ガイドラインを確認し、許可されている範囲内で利用
  • 実在人物の加工なら、本人や所属事務所の許可を得る
  • 企業ロゴやブランドなら、企業に問い合わせる

軸2:オリジナル指向のプロンプト設計

許可取得が難しい場合は、既存作品に依存しないプロンプト設計を心がけることで、リスクを最小化できます。

  • 「〇〇風」ではなく「オリジナルの〇〇」
  • 既存キャラクターへの言及を避け、独自コンセプトで記述
  • 企業ロゴやブランド名を避け、概念的な説明を使用

実装のステップ

  1. 自分の利用目的を明確にする

    • 私的使用か、公開か、商用利用か
  2. 権利者を特定する

    • 実在人物なら本人や所属事務所
    • キャラクターなら著作権者(出版社、制作会社など)
    • 企業ロゴなら企業本体
  3. 許可可能性を判断する

    • 公式ガイドラインがあるか
    • 許可取得の手続きがあるか
    • 許可が難しい場合は、オリジナル指向で対応
  4. プロンプト設計を工夫する

    • 既存作品への参照を最小化
    • 「オリジナル」「独自」という表現を活用
    • 生成後も、既存作品に類似していないか確認

最後に

AI技術は、創造的な表現を民主化する素晴らしいツールです。しかし、その力を持つ者には、責任が伴います。

「ええんかなって思ってた」という素朴な疑問は、実は非常に重要です。なぜなら、それは「権利者が困るかもしれない」という倫理的な問題意識を示しているからです。

法律は、その倫理的な問題意識を形式化したものに過ぎません。STU48事件は、その倫理と法律が現実に交差する瞬間を示しています。

AI生成画像を利用する際は、「これで誰が困るのか」を常に問い続けることが、最も実用的で、最も安全な対策なのです。

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