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自宅ラボ構築ガイド：ProxmoxでVMクラスター環境を作る

👤 インフラエンジニア 📅 2024-10-15 ⭐ 4.8点 ⏱️ 20m

自宅ラボ構築ガイド：ProxmoxでVMクラスター環境を作る

自宅でエンタープライズレベルのサーバー環境を構築したい。そんな願いを叶えるのがProxmox VEを使った仮想化クラスターです。今回は実際に3ノード構成のクラスターを構築し、高可用性と冗長化を実現する完全ガイドをお届けします。

なぜProxmoxなのか？

VMwareやHyper-Vと比較して、Proxmoxには以下の優位性があります：

  • 完全無料：商用利用も含めて一切の制限なし
  • 高機能Web UI：直感的で分かりやすい管理画面
  • KVMベース：Linux標準の仮想化技術で安定性抜群
  • クラスター機能：標準でHA（高可用性）機能を搭載
  • 豊富なストレージオプション：ZFS、Ceph、NFSなど多様な選択肢

ハードウェア構成と予算

推奨ハードウェア構成

今回構築したクラスター環境のスペックをご紹介します：

ノード1（メインサーバー）：

  • CPU: Intel Core i7-12700K（12コア/20スレッド）
  • RAM: 64GB DDR4-3200
  • ストレージ: 1TB NVMe SSD（システム用） + 4TB SATA SSD（データ用）
  • ネットワーク: Intel I225-V 2.5GbE × 2ポート

ノード2・3（サブサーバー）：

  • CPU: AMD Ryzen 5 5600G（6コア/12スレッド）
  • RAM: 32GB DDR4-3200
  • ストレージ: 500GB NVMe SSD + 2TB SATA SSD
  • ネットワーク: Realtek 2.5GbE × 2ポート

ネットワーク機器：

  • メインスイッチ: Netgear GS724T（24ポートマネージドスイッチ）
  • UPS: CyberPower CP1500PFCLCD（1500VA）

総予算：約45万円

  • ノード1: 約20万円
  • ノード2・3: 各12万円
  • ネットワーク・UPS: 約3万円

最小構成での構築

予算を抑えたい場合の構成例：

シングルノード構成：

  • CPU: Intel Core i5-12400（6コア）
  • RAM: 32GB
  • ストレージ: 1TB NVMe SSD
  • 予算: 約12万円

この構成でも十分に学習・検証環境として活用できます。

Proxmoxインストールと基本設定

インストール手順

1. インストールメディアの作成

# Proxmox VE 8.1 ISOをダウンロード
wget https://www.proxmox.com/downloads/proxmox-ve-8-1-iso

# USBメディアに書き込み（Linux環境）
sudo dd if=proxmox-ve-8.1-2.iso of=/dev/sdX bs=1M status=progress

2. 各ノードへのインストール

インストール時の重要な設定項目：

  • ホスト名: pve-01, pve-02, pve-03
  • IPアドレス: 固定IP必須（例：192.168.1.10-12）
  • DNS設定: 8.8.8.8, 1.1.1.1
  • ファイルシステム: ZFS RAID1推奨（冗長性確保）

3. 初期設定とアップデート

# パッケージリストの更新
apt update && apt upgrade -y

# 必要なパッケージのインストール
apt install -y vim curl wget htop iotop

# SSH キー認証の設定
ssh-keygen -t ed25519
ssh-copy-id root@pve-02
ssh-copy-id root@pve-03

ネットワーク設定の最適化

ボンディング設定（/etc/network/interfaces）：

# 物理インターフェース
auto ens33
iface ens33 inet manual

auto ens34  
iface ens34 inet manual

# ボンディングインターフェース（冗長化）
auto bond0
iface bond0 inet static
    address 192.168.1.10/24
    gateway 192.168.1.1
    bond-slaves ens33 ens34
    bond-miimon 100
    bond-mode active-backup

# ブリッジインターフェース（VM用）
auto vmbr0
iface vmbr0 inet static
    address 192.168.1.10/24
    bridge-ports bond0
    bridge-stp off
    bridge-fd 0

クラスター構築手順

クラスターの作成

メインノード（pve-01）でクラスター作成：

# クラスターの初期化
pvecm create homelabcluster

# クラスター状態の確認
pvecm status

サブノード（pve-02, pve-03）の参加：

# ノード2での実行
pvecm add 192.168.1.10

# ノード3での実行  
pvecm add 192.168.1.10

共有ストレージの設定

Cephクラスター構築：

# 各ノードでCephパッケージインストール
apt install -y ceph-common

# メインノードでCeph初期化
ceph-deploy new pve-01 pve-02 pve-03

# モニターの作成
ceph-deploy mon create-initial

# OSDの作成（各ノードのデータディスク）
ceph-deploy osd create pve-01 --data /dev/sdb
ceph-deploy osd create pve-02 --data /dev/sdb  
ceph-deploy osd create pve-03 --data /dev/sdb

# メタデータサーバーの作成
ceph-deploy mds create pve-01 pve-02 pve-03

ProxmoxでのCephプール設定：

# RBDプールの作成
ceph osd pool create vm-storage 128 128
ceph osd pool create backup-storage 64 64

# プールの有効化
rbd pool init vm-storage
rbd pool init backup-storage

Web UIでのストレージ追加

Proxmox Web UI（https://192.168.1.10:8006）にアクセスし：

  1. Datacenter → Storage → Add → RBD
  2. ID: ceph-vm
  3. Pool: vm-storage
  4. Monitor Host: 192.168.1.10,192.168.1.11,192.168.1.12
  5. Content: Disk image, Container

高可用性（HA）設定

HAリソースの設定

# HAマネージャーの有効化
ha-manager config

# VM/CTをHAリソースとして登録
ha-manager add vm:100 --state started --group ha-group-1
ha-manager add vm:101 --state started --group ha-group-2

# HAグループの作成（ノード優先度設定）
ha-manager groupconfig ha-group-1 -nodes "pve-01:2,pve-02:1,pve-03:1"

フェンシング設定

ノード障害時の適切な処理のため、フェンシング機能を設定：

# IPMI設定（対応ハードウェアの場合）
echo "fence_ipmilan" >> /etc/ha/fence.cfg

# ネットワークベースフェンシング設定
cat >> /etc/pve/ha/fence.cfg << EOF
fence_network {
    network = "192.168.1.0/24"
    timeout = 60
}
EOF

バックアップ戦略

自動バックアップスケジュール

Proxmox Backup Server（PBS）を別ノードに構築：

# PBS専用VM作成（推奨スペック：4vCPU, 8GB RAM, 500GB Disk）
qm create 200 --name "pbs-01" --memory 8192 --cores 4 --net0 virtio,bridge=vmbr0
qm set 200 --scsi0 ceph-vm:vm-200-disk-0,size=500G
qm start 200

PBSでのデータストア作成：

# データストアディレクトリ作成
mkdir -p /backup/datastore

# データストア登録
proxmox-backup-manager datastore create backup-ds /backup/datastore

Proxmoxでのバックアップ設定：

Web UIで Datacenter → Backup でスケジュール設定：

  • スケジュール: 毎日 2:00 AM
  • 選択: すべてのVM/CT
  • モード: Snapshot（可能な場合）
  • 保持期間: 7日間

3-2-1バックアップルール実装

レプリケーション設定：

# 重要VMの他ノードへのレプリケーション
vzdump 100 --mode snapshot --compress gzip --storage backup-storage

# 外部ストレージへの定期同期
rsync -avz /var/lib/vz/dump/ backup-server:/external-backup/

オフサイトバックアップスクリプト：

#!/bin/bash
# /usr/local/bin/offsite-backup.sh

BACKUP_DIR="/var/lib/vz/dump"
REMOTE_SERVER="backup.example.com"
REMOTE_PATH="/backup/homelab"

# 前日のバックアップファイルを転送
find $BACKUP_DIR -name "*.gz" -mtime -1 -exec scp {} $REMOTE_SERVER:$REMOTE_PATH/ \;

# 古いローカルバックアップの削除（30日以上）
find $BACKUP_DIR -name "*.gz" -mtime +30 -delete

crontabでの自動実行：

# crontab -e
0 4 * * * /usr/local/bin/offsite-backup.sh

監視とアラート設定

Prometheusとの連携

Node Exporterのインストール：

# 各ノードで実行
wget https://github.com/prometheus/node_exporter/releases/download/v1.7.0/node_exporter-1.7.0.linux-amd64.tar.gz
tar xvfz node_exporter-*.tar.gz
sudo cp node_exporter-*/node_exporter /usr/local/bin/
sudo chmod +x /usr/local/bin/node_exporter

# systemdサービス作成
cat > /etc/systemd/system/node_exporter.service << EOF
[Unit]
Description=Node Exporter
After=network.target

[Service]
User=nobody
ExecStart=/usr/local/bin/node_exporter
Restart=on-failure

[Install]
WantedBy=multi-user.target
EOF

systemctl enable node_exporter
systemctl start node_exporter

Grafanaダッシュボード設定

重要な監視項目：

  • CPU使用率: 各ノード・VM単位
  • メモリ使用量: 物理・仮想メモリ
  • ディスクI/O: IOPS、レイテンシ
  • ネットワーク: 帯域使用量、パケットロス
  • Cephステータス: プール使用量、OSD状態

アラート設定

重要アラートルール：

# /etc/prometheus/alert.rules.yml
groups:
- name: homelab-alerts
  rules:
  - alert: NodeDown
    expr: up == 0
    for: 1m
    labels:
      severity: critical
    annotations:
      summary: "Node {{ $labels.instance }} is down"
      
  - alert: HighCPUUsage
    expr: 100 - (avg by(instance) (rate(node_cpu_seconds_total{mode="idle"}[5m])) * 100) > 80
    for: 5m
    labels:
      severity: warning
      
  - alert: HighMemoryUsage
    expr: (node_memory_MemTotal_bytes - node_memory_MemAvailable_bytes) / node_memory_MemTotal_bytes * 100 > 85
    for: 5m
    labels:
      severity: warning

実際の運用ノウハウ

パフォーマンスチューニング

CPU設定の最適化：

# CPU Governor設定
echo performance > /sys/devices/system/cpu/cpu*/cpufreq/scaling_governor

# IRQアフィニティ設定
echo 2 > /proc/irq/24/smp_affinity  # NIC IRQを特定CPUに固定

メモリ設定：

# Transparent Huge Pages無効化
echo never > /sys/kernel/mm/transparent_hugepage/enabled

# swappiness調整
echo 'vm.swappiness=10' >> /etc/sysctl.conf

セキュリティ強化

ファイアウォール設定：

# Proxmoxファイアウォール有効化
pve-firewall compile
pve-firewall start

# 必要ポートのみ開放
pve-firewall localnet add 192.168.1.0/24  # 管理ネットワーク

証明書の更新：

# Let's Encryptを使用（外部からアクセス可能な場合）
pvenode config set --acme domains=pve.yourdomain.com
pvenode acme cert order

障害対応手順

ノード障害時の対応：

  1. 障害ノードの特定：pvecm statusで確認
  2. VM/CTの移行：qm migrate 100 pve-02で他ノードに移動
  3. クラスターからの除外：pvecm delnode pve-xx
  4. ハードウェア修復後の再参加：pvecm add

ストレージ障害時の対応：

# Cephクラスター状態確認
ceph -s

# 障害OSDの特定と交換
ceph osd out osd.1
ceph osd crush remove osd.1  
ceph osd rm osd.1

費用対効果と運用コスト

電力消費量

実際の消費電力測定結果：

  • アイドル時: 約180W（全体）
  • 高負荷時: 約350W（全体）
  • 月間電力料金: 約4,500円（東京電力従量電灯B）

学習・検証環境としての価値

スキル習得効果：

  • 仮想化技術: VMware vSphere相当の知識
  • Linux管理: CentOS/Ubuntu Server管理
  • ネットワーク: VLAN、ボンディング設定
  • ストレージ: ZFS、Ceph分散ストレージ
  • 監視: Prometheus/Grafana

業務応用価値： 市場価値の高いスキルセットを実践的に習得可能。 年収アップ効果：平均50-100万円（インフラエンジニア）

まとめとアドバイス

構築を成功させるポイント

段階的アプローチ：

  1. Phase 1: シングルノードでの基本習得（1ヶ月）
  2. Phase 2: 2ノードクラスターでHA体験（1ヶ月）
  3. Phase 3: 3ノード+Cephで本格運用（1ヶ月）

よくある失敗と対策：

ネットワーク設計の軽視： → 最初から冗長化を前提とした設計が重要

バックアップの軽視： → 構築初日からバックアップ体制を整備

監視の後回し： → 本格運用前に監視体制を完成させる

今後の拡張計画

短期（6ヶ月以内）：

  • GPU仮想化対応（NVIDIA Grid）
  • Container as a Service（Kubernetes）
  • CI/CDパイプライン統合

中期（1年以内）：

  • Software Defined Network（SDN）
  • Infrastructure as Code（Terraform/Ansible）
  • セキュリティ強化（SIEM導入）

自宅ラボは単なる趣味の範囲を超え、キャリア構築の重要な投資です。Proxmoxを中心とした環境構築により、エンタープライズレベルの技術スキルを実践的に習得できます。

初期投資は決して小さくありませんが、得られる知識とスキルは計り知れない価値があります。段階的な構築アプローチで、無理のない範囲から始めることをお勧めします。

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