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セルフホストPaaS完全比較:Dokku vs Coolify vs Dokploy、安定性重視なら2025年はコレ一択

👤 いわぶち 📅 2025-12-08T11:52:22 ⭐ 4.8点 ⏱️ 18m

📌 1分で分かる記事要約

  • Dokku:10年以上の歴史を持つ「最も安定した老舗」。CLIベースでシンプルだが、本番運用の実績が豊富で信頼性が最高峰
  • Coolify:2024年末時点で「実用的なUI付きセルフホストPaaS」として急速に成熟。マルチサーバー対応で中小規模サービスに最適
  • Dokploy:2024年開始の新興ツールながら、組み込みCI/CD・ロールバック・チーム機能が充実。モダンな設計で初心者向けの学習曲線が最短
  • コスト面:VPS ¥715/月 + 保守工数で年間¥8,580〜。AWS/GCPと比べて年間3〜9万円の削減が可能
  • 2025年の推奨:「安定性最優先」ならDokku、「UIと機能のバランス」ならCoolify、「モダンな開発体験」ならDokploy

セルフホストPaaSが2025年に注目される理由

クラウドPaaS(Vercel・Firebase・Render)の月額費用が$20〜50と高くなる中、小規模なWebアプリケーションやAPIサーバーを運用する開発者の間で「セルフホストPaaS」への関心が急速に高まっています。

特に以下のような状況では、セルフホストが圧倒的に有利です:

  • 予測可能なトラフィック:月間アクティブユーザーが安定している小規模SaaS
  • コスト最適化:毎月の請求額を最小化したいスタートアップ
  • データ主権:EU GDPR対応やデータローカライゼーションが必要
  • 完全なコントロール:デプロイメント戦略やインフラ構成を自由に設計したい

2024年末から2025年初にかけて、Dokku・Coolify・Dokploy という3つの主要なセルフホストPaaSツールが、それぞれ異なる方向で進化を遂げています。本記事では、これら3つのツールを機能・安定性・コスト・学習曲線の観点から徹底比較し、あなたの状況に最適な選択肢を提示します。


セルフホストPaaS機能比較表

まず、3つのツールの機能を一覧で比較してみましょう。

機能DokkuCoolifyDokploy
管理UI❌ CLI のみ✅ フル機能GUI✅ シンプルGUI
CI/CD自動化❌ 外部CI必要✅ 組み込み✅ 組み込み
GitHub連携✅ git push デプロイ✅ 自動デプロイ✅ 自動デプロイ
GitLab連携
HTTPS/SSL✅ Let’s Encrypt✅ 自動発行✅ Traefik統合
DB管理UI❌ CLI操作✅ ダッシュボード✅ GUI管理
対応DBPostgreSQL, MySQL, MongoDB, RedisPostgreSQL, MySQL, MongoDB, Redis, DragonFly, ClickHousePostgreSQL, MySQL, MongoDB, MariaDB, Redis
自動バックアッププラグイン✅ 標準装備要設定
プラグイン数300+少数少数
ビルド方式Heroku Buildpack, DockerfileDocker, Buildpack, GitNixpacks, Dockerfile, Buildpack, Paketo
ワンクリックテンプレート✅ 豊富
マルチサーバー対応
ゼロダウンタイムデプロイ
ロールバック機能✅ CLI✅ GUI✅ GUI
ログ管理CLI✅ リアルタイムUI✅ GUI
監視・メトリクスプラグイン✅ 標準装備✅ Grafana対応
環境変数管理CLIGUIGUI
Docker Compose対応✅ ネイティブ
カスタムドメイン
Webhooksプラグイン
チーム管理Dokku Pro(有料)✅ 無料版でも可能要確認

簡易評価表

項目DokkuCoolifyDokploy
初心者向け⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐
CLI好き向け⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐
安定性⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐
機能の豊富さ⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐
軽量性⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐⭐

各ツールの詳細比較:プロジェクトの成熟度と開発活動

Dokku:10年以上の歴史を持つ「枯れた安定性」

プロジェクト概要

Dokkuは2013年から開発が続く、最も歴史あるセルフホストPaaSです。Herokuの設計思想を取り入れ、「git pushするだけでデプロイ」というシンプルなワークフローを実現しています。

2024年末〜2025年初の開発状況

  • 最新バージョン:v0.37.2(定期的なセキュリティアップデートとプラグイン更新を継続)
  • リリース頻度:月1〜2回程度の安定したペース
  • 総リリース数:314回以上(10年以上の長期サポートの証)
  • コミュニティ規模:GitHubスター3万超、2,000以上のフォーク
  • 更新方針:「破壊的な変更を避け、シンプルさを保つ」という哲学を貫いている

安定性の評価

Dokkuの最大の強みは、その**「変わらなさ」**にあります。コアの仕様がほぼ変わらないため、5年前に構築したDokkuシステムでも、今日のドキュメントがそのまま通用します。これは長期運用において非常に重要な特性です。

実装面では以下の点が特徴的です:

  • シンプルなアーキテクチャ:Docker + Nginx + Let’s Encrypt プラグインの組み合わせで構成
  • トラブルシュートの容易さ:ほぼLinuxとDockerの知識だけで問題解決が可能
  • プロダクション実績:10年以上の運用事例が存在し、多くのスタートアップが本番環境で使用

デメリット

一方で、以下の点は現代的なPaaSとしては物足りない側面です:

  • UIが存在しない:すべてCLIコマンドで操作する必要があり、初心者には敷居が高い
  • CI/CDが組み込まれていない:GitHub Actionsなどの外部サービスと連携する必要がある
  • マルチサーバー対応がない:複数サーバーでの負荷分散には別途工夫が必要
  • モニタリング機能が基本的:本格的な監視にはプラグインやサードパーティツールが必要

Coolify:2024年末に「実用レベルの成熟」に到達

プロジェクト概要

Coolifyは2021年に開始された比較的新しいプロジェクトですが、2024年末時点で「本番運用に耐える」レベルの機能と安定性を獲得しています。UIを重視し、初心者でも直感的に操作できる設計が特徴です。

2024年末〜2025年初の開発状況

  • 最新バージョン:v4.0.0-beta系(安定化フェーズに入った)
  • リリース頻度:非常に活発で、毎月複数のメジャーアップデート
  • 最新の大型更新:セキュリティ修正4件、新テスト60+、テンプレート追加(Elasticsearch、Ente Photos、pgAdminなど)
  • 開発規模:直近のプルリクエストで4,452行追加、104ファイル変更など、積極的な機能拡張を継続
  • コミュニティ活動:Discord、GitHub Discussionsでの質問・回答が活発

強み:「UI付きで多機能」

Coolifyの最大の利点は、以下の点に集約されます:

  • 直感的なUI:ブラウザからすべての操作が可能で、インフラ知識がなくても使える
  • ワンクリックテンプレート:WordPress・Ghost・PostgreSQL・MongoDBなど、事前設定済みのテンプレートから即座にサービスを起動可能
  • マルチサーバー対応:Docker Swarmベースで、複数サーバーをUIから簡単に管理できる
  • 充実した監視機能:CPU・メモリ・ディスク使用率などをリアルタイムダッシュボードで確認
  • 自動バックアップ:データベースの自動バックアップが標準装備

実装例:GitHubからの自動デプロイ設定

Coolifyの使いやすさを実感するには、実際のセットアップを見るのが最良です。以下の流れで、GitHubリポジトリからの自動デプロイが可能です:

  1. Coolifyダッシュボードから「新規プロジェクト」を作成
  2. 「Git連携」を選択し、GitHubアプリを認可
  3. リポジトリとブランチを選択(例:main
  4. ビルドコマンドを指定(例:npm run build
  5. 「Auto Deploy on Push」をONに設定
  6. 以後、git pushするたびに自動でビルド・デプロイが実行される

デメリット

Coolifyの欠点としては:

  • 機能追加が頻繁:アップグレード時に挙動が変わる可能性があり、本番環境では事前のテストが必須
  • UIの不安定性:複雑な設定時にUIが反応しなくなるケースが報告されている
  • ドキュメント不足:日本語情報がほぼなく、英語ドキュメントも発展途上
  • リソース消費:Dokploy比で約2倍のメモリを消費するという報告あり

Dokploy:2024年開始の「モダン設計の新星」

プロジェクト概要

Dokploy は2024年に開始された最新のセルフホストPaaSです。Vercel・Render・NetlifyなどのクラウドPaaSの「使いやすさ」を、オンプレミス環境で実現することを目指しています。

2024年末〜2025年初の開発状況

  • 最新バージョン:v0.25.5(月2〜4回ペースで新機能リリース)
  • 2024年のマイルストーン
    • プレビューデプロイメント機能(PRごとに一時的なURLを自動生成)
    • バルクデプロイ(複数アプリを一括操作)
    • 自己参照環境変数(アプリ内での変数参照が可能)
    • Traefik 3.5.0への最新対応
  • 開発スタイル:新規プロジェクトながら、最新技術への追従スピードが速い

強み:「モダンなCI/CDとロールバック」

Dokploy の特徴は、クラウドPaaS的な使いやすさをセルフホスト環境で実現している点です:

  • 組み込みCI/CD:GitHubやGitLabと連携し、リポジトリ接続だけでパイプラインが自動構築される
  • プレビュー環境:PR作成時に自動的にプレビュー環境が生成され、本番反映前に確認可能
  • ワンクリックロールバック:デプロイ履歴から前のバージョンに即座に戻せる(障害時の対応が迅速)
  • 自動バックアップ:アプリケーションとデータベースの定期バックアップが自動実行
  • チーム機能:プロジェクト単位でメンバーを招待し、ロール管理が可能
  • Docker Compose ネイティブ対応:複雑なマルチコンテナ構成も簡単に定義・デプロイ可能

実装例:Next.js アプリのデプロイ

Dokployの簡潔さを示す実装例です:

# Dokploy での Docker Compose 定義(例)
version: '3.8'
services:
  web:
    image: node:18
    ports:
      - "3000:3000"
    environment:
      - DATABASE_URL=postgresql://user:pass@db:5432/myapp
      - NODE_ENV=production
    depends_on:
      - db

  db:
    image: postgres:15
    environment:
      - POSTGRES_PASSWORD=secure_password
      - POSTGRES_DB=myapp
    volumes:
      - postgres_data:/var/lib/postgresql/data

volumes:
  postgres_data:

このファイルをDokployにアップロードするだけで、Webアプリとデータベースが自動的にセットアップされます。

デメリット

Dokploy はまだ新しいプロジェクトであるため:

  • 長期運用実績が少ない:3年以上の本番運用事例がほぼない
  • ドキュメント不足:日本語情報はほぼなく、英語でも発展途上
  • コミュニティが小規模:トラブル時のサポート情報が限定的
  • アップデート頻度が高い:新機能追加のペースが速く、バージョンアップ時に破壊的変更の可能性

実装難易度と学習曲線の比較

セルフホストPaaSを選ぶ際、「実際にどのくらいの時間で導入できるのか」は重要な判断基準です。以下は、各ツールの学習曲線と初期セットアップの難易度を比較したものです。

項目DokkuCoolifyDokploy
公式ドキュメント充実度⭐⭐⭐⭐⭐ 非常に充実⭐⭐⭐⭐ 良好⭐⭐⭐ 標準的
日本語情報量⭐⭐⭐⭐ 多い⭐⭐ 少ない⭐ 非常に少ない
初心者向けチュートリアル⭐⭐⭐⭐⭐ 豊富⭐⭐⭐ ある⭐⭐⭐ ある
学習曲線(緩やか=初心者向け)⭐⭐⭐ 中程度⭐⭐⭐⭐ 緩やか⭐⭐⭐⭐⭐ 非常に緩やか
初回デプロイまでの時間30分〜1時間1〜2時間30分〜1時間
コミュニティサポート⭐⭐⭐⭐⭐ 活発⭐⭐⭐⭐ 成長中⭐⭐⭐ 小規模

Dokku:「日本語情報が豊富」という大きな利点

Dokkuは10年以上の歴史があるため、日本語での解説記事が豊富です。KAGOYA・ミライサーバー・さくらインターネットなどのVPS提供企業が詳細なセットアップガイドを公開しており、初心者でも比較的簡単に導入できます。

つまづきやすいポイント

  • SSH鍵設定:デプロイするマシンの公開鍵をサーバーに登録する必要がある
  • データベース作成:PostgreSQLやMySQLを使う場合、別途プラグインをインストールし、CLI コマンドでDB作成する
  • 環境変数の設定dokku config:set コマンドで環境変数を指定する必要がある

これらは一度理解すれば簡単ですが、初めての人には「なぜこんなことをするのか」が理解しにくい側面があります。

Coolify:「UI が直感的」だが「設定項目が多い」

Coolifyはブラウザから操作できるため、CLI操作が苦手な人には最適です。ただし、マルチサーバー構成やDocker Swarmの概念を理解していないと、複雑な設定に迷う可能性があります。

つまづきやすいポイント

  • Docker Swarmの理解:複数サーバーを管理する場合、Swarmの「Manager」「Worker」といった概念を理解する必要がある
  • リソース消費:Coolifyのダッシュボード自体がメモリを消費するため、小さなVPS(1GB RAM)では動作が遅くなる可能性
  • UI の変更:バージョンアップでUIが大きく変わることがあり、古いチュートリアルが使えなくなるケース

Dokploy:「最も短い学習曲線」だが「情報が少ない」

Dokploy は UI設計がシンプルで、初心者でも直感的に操作できます。ただし、2024年開始の新しいプロジェクトであるため、トラブル時に参照できる日本語情報がほぼ存在しません。

つまづきやすいポイント

  • ドキュメント不足:英語ドキュメントも発展途上で、詳細な設定方法が明記されていないケースがある
  • テンプレートの限定性:ワンクリックテンプレートは豊富だが、カスタマイズが必要な場合は自分でDockerfileを書く必要がある
  • サポートコミュニティ:Zennなどに数記事ある程度で、トラブル時の相談相手が限定的

セルフホスト vs クラウドPaaS:コスト・自由度・運用負担の比較

セルフホストPaaSを導入する前に、クラウドPaaS(Vercel・Firebase・Render)との比較を理解することは重要です。以下は、実際の運用コストと手間を比較したものです。

月額コスト比較表

サービス月額料金推奨スペック備考
Vercel Pro$20/月-1TB帯域、サーバーレス関数込み
Firebase Blaze従量課金($0〜500+)-小規模無料、スケール時に高額化
Render$40〜800/月-Next.js大規模アプリで高額になる可能性
Dokku(VPS)¥715〜830/月2GB RAMHetznel・ConoHa・さくらVPS等
Coolify(VPS)¥715〜830/月2GB RAM同上
Dokploy(VPS)¥715〜830/月2GB RAM同上
自宅Proliant電気代のみ-初期投資済みなら最安

詳細なコスト分析

クラウドPaaS(Vercel + Firebase の例)

月額コスト:
- Vercel Pro:$20/月 = ¥2,200
- Firebase Blaze:$0〜100/月 = ¥0〜11,000
- ロードバランサー・CDN:別途費用

年間コスト:¥26,400〜159,600

特徴:
- 従量課金のため、トラフィックスパイク時に予想外の請求が発生
- スケーラビリティは自動だが、コスト管理が複雑

セルフホスト(VPS + Dokku の例)

月額コスト:
- VPS(Hetzner 2GB):¥715
- 保守工数(月2時間 × ¥3,000/時):¥6,000(換算)

年間コスト:¥8,580

特徴:
- 固定費なので、トラフィックがどう変わっても請求額は変わらない
- 保守工数は実際の時間投下であり、完全に自動化できる部分も多い

自宅Proliant(既に購入済みの場合)

月額コスト:
- VPS費用:¥0
- 電気代(推定100W × 24h × 30日 = 72kWh):¥700

年間コスト:¥8,400

特徴:
- 初期投資が既に完了していれば、実質的には電気代のみ
- Vercelとの年間差額:¥18,000〜151,200の削減

メリット・デメリット対比

項目セルフホストVercel/Firebase
月額コスト✅ ¥715〜(90%削減可)❌ ¥2,000〜
自由度✅ フルコントロール❌ プラットフォーム依存
データ移行✅ 容易❌ Firebase特に困難
スケーラビリティ❌ 手動対応必要✅ 自動スケール
運用負担❌ 月1〜2時間✅ ゼロメンテナンス
障害対応❌ 自己責任✅ SLA保証
初期セットアップ❌ 1〜2時間✅ 数分
監視・ログ❌ 自前構築✅ 標準装備

選択基準:あなたはどちらに向いている?

セルフホスト推奨の状況

  • 年間トラフィックが予測可能(従量課金の不安がない)
  • 年間3万円以上のコスト削減が経営判断に影響する
  • データ主権やコンプライアンス要件がある(GDPR・CCPA対応など)
  • インフラへの完全なコントロールが必要
  • 既にVPSやサーバーを保有している

クラウドPaaS推奨の状況

  • トラフィックスパイク(例:メディア掲載による急増)が予想される
  • 運用工数をゼロに近づけたい(スタートアップの初期段階など)
  • 99.99%以上のアップタイム SLA が必須
  • 複数リージョンでのグローバル展開が必要
  • DevOpsエンジニアの採用予定がない

小規模SaaS向けユースケース事例

実際の開発者がどのツールを選んでいるのか、そしてなぜそう選んだのかを理解することは、あなたの判断に役立ちます。以下は、2024年末〜2025年初の実例から抽出したユースケースです。

ケース1:Next.js + PostgreSQL の個人SaaS

要件

  • Next.jsでビルドしたWebアプリケーション
  • PostgreSQL でユーザーデータを管理
  • 月間アクティブユーザー:100〜500人
  • 予算:月額¥1,000以下に抑えたい

推奨ツールDokploy

理由

  • Docker Compose でNext.jsとPostgreSQLを同時定義できる
  • ビルド・デプロイ・ロールバック がUIから簡単に実行可能
  • GitHub連携で git push 後の自動デプロイが即座に機能
  • メモリ消費が少ないため、2GB RAM VPSで十分動作
  • 年間コスト:¥8,580(VPS)+ 保守工数で総額¥15,000程度

実装ステップ

# Dokploy サーバーにアクセス
# ダッシュボード → 新規プロジェクト → Docker Compose

# docker-compose.yml を作成・アップロード
version: '3.8'
services:
  web:
    build: .
    ports:
      - "3000:3000"
    environment:
      - DATABASE_URL=postgresql://user:pass@db:5432/myapp
  db:
    image: postgres:15
    environment:
      - POSTGRES_PASSWORD=secure_password
      - POSTGRES_DB=myapp
    volumes:
      - postgres_data:/var/lib/postgresql/data

volumes:
  postgres_data:

ケース2:複数マイクロサービスの分散配置

要件

  • API サーバー(Node.js)
  • フロントエンド(React)
  • バックグラウンドジョブ(Python)
  • それぞれ独立したスケーリングが必要

推奨ツールDokploy または Coolify

理由

  • Dokploy:Docker Compose でマイクロサービス構成を簡潔に定義可能
  • Coolify:複数サーバーにサービスを分散配置し、各々のリソース監視が可能
  • どちらも GitHub 連携で、サービスごとに異なるリポジトリからのデプロイをサポート

ケース3:初めてのセルフホスト&UI重視

要件

  • セルフホストは初めて
  • CLI操作が苦手
  • WordPress・Ghost・データベース管理をUI から実行したい

推奨ツールCoolify

理由

  • ワンクリックテンプレートで WordPress を即座に起動可能
  • UI から CPU・メモリ・ディスク使用率を監視できる
  • データベースのバックアップ・復元も GUI で実行可能
  • マルチサーバー対応で、将来的なスケーリングも容易

ケース4:長期運用・安定性最優先

要件

  • 5年以上の運用を想定
  • 仕様変更による影響を最小化したい
  • ドキュメント・参考情報が豊富であることが必須

推奨ツールDokku

理由

  • 10年以上の運用実績があり、仕様がほぼ変わらない
  • 日本語の解説記事・ブログが豊富
  • トラブル時に Stack Overflow や GitHub Issues で解決策が見つかりやすい
  • シンプルな設計のため、何か問題が起きても Linux + Docker の知識で対応可能

2025年の各ツール最新情報と更新トレンド

2024年末から2025年初にかけて、3つのツールはそれぞれ異なる方向で進化しています。以下は、各ツールの最新の開発トレンドです。

Dokku:「枯れた安定性」を継続

2024年末〜2025年初の主要アップデート

  • Docker バージョン対応:Docker 27.x 系への対応を完了
  • Buildpack アップデート:Heroku Buildpack の最新版に追従
  • セキュリティパッチ:定期的なセキュリティ修正を継続
  • プラグイン安定化:PostgreSQL・Redis・Let’s Encrypt プラグインの bug fix

開発方針

Dokku の開発チームは「新機能よりも安定性」という方針を貫いています。大きな設計変更はほぼなく、既存ユーザーのアップグレード負担を最小化することを重視しています。

ユーザーへの影響

  • ✅ 既存のセットアップが長期間そのまま動作する
  • ✅ ドキュメントが陳腐化しにくい
  • ❌ UI・自動スケーリング・CI/CD などの「モダンな機能」は期待できない

Coolify:「実用的な成熟」に到達

2024年末〜2025年初の主要アップデート

  • マルチサーバー管理の強化:Docker Swarm ベースの複数サーバー管理がより安定化
  • UI・モニタリング機能の拡充:ダッシュボードのレスポンス向上、エラー表示の改善
  • 新テンプレート追加:Elasticsearch・Ente Photos・pgAdmin などの事前設定済みテンプレート
  • セキュリティ修正:4件の重大セキュリティ脆弱性を修正
  • Git 連携安定化:GitHub/GitLab からの自動デプロイの timeout 問題を解決

開発方針

Coolify は「機能豊富さ」と「実用性」のバランスを取ろうとしています。毎月複数のリリースで新機能を追加しつつ、テストを強化し(直近で60+の新テスト追加)、本番環境での信頼性を高めています。

ユーザーへの影響

  • ✅ 定期的に新機能が追加される(モダンなPaaS的体験)
  • ✅ UI から複数サーバーを管理可能
  • ✅ ワンクリックテンプレートで初期セットアップが高速
  • ❌ アップグレード時に挙動が変わる可能性がある
  • ❌ メモリ消費が多い(小規模 VPS では注意が必要)

Dokploy:「モダン機能の急速な拡充」

2024年末〜2025年初の主要アップデート

  • プレビューデプロイメント:PR作成時に自動的にプレビュー環境を生成
  • バルクデプロイ:複数アプリを一括でデプロイ・停止・再起動
  • 自己参照環境変数:アプリケーション内での環境変数参照が可能に
  • Traefik 3.5.0 対応:最新のリバースプロキシバージョンへの対応
  • チーム・権限管理:プロジェクト単位でのメンバー招待とロール管理

開発方針

Dokploy は「Vercel・Render のような使いやすさをセルフホストで実現する」という明確なビジョンを持っています。新機能追加のペースが速く、ユーザーからのフィードバックを積極的に反映しています。

ユーザーへの影響

  • ✅ CI/CD・ロールバック・バックアップが最初から揃っている
  • ✅ 学習曲線が短く、初心者でも即座に使える
  • ✅ GitHub/GitLab との連携が深い
  • ❌ 歴史が浅く、長期運用の事例がまだ少ない
  • ❌ 日本語情報がほぼない

実装難易度の詳細ガイド:各ツールのセットアップ手順

ここからは、実際にセットアップする際の具体的な手順を、各ツール別に解説します。

Dokku のセットアップ(Ubuntu 20.04 LTS の例)

ステップ1:Dokku のインストール

# VPS にSSH でログイン
ssh root@your-server-ip

# Dokku インストールスクリプトをダウンロード・実行
wget https://raw.githubusercontent.com/dokku/dokku/v0.34.0/bootstrap.sh
sudo DOKKU_TAG=v0.34.0 bash bootstrap.sh

# インストール完了後、ブラウザで http://your-server-ip にアクセス
# SSH 公開鍵を登録し、初期セットアップを完了

ステップ2:新規アプリケーションの作成

# サーバー上でアプリを作成
dokku apps:create myapp

# ローカルマシンから Git リモートを追加
git remote add dokku dokku@your-server-ip:myapp

# デプロイ
git push dokku main

ステップ3:PostgreSQL の追加

# PostgreSQL プラグインをインストール
sudo dokku plugin:install https://github.com/dokku/dokku-postgres.git

# データベースを作成
dokku postgres:create myapp-db

# アプリに DB をリンク
dokku postgres:link myapp-db myapp

# 環境変数が自動的に DATABASE_URL として設定される

ステップ4:HTTPS の設定

# Let's Encrypt プラグインをインストール
sudo dokku plugin:install https://github.com/dokku/dokku-letsencrypt.git

# ドメインを設定
dokku domains:set myapp example.com

# HTTPS 証明書を自動取得
dokku letsencrypt:enable myapp

所要時間:30分〜1時間

つまづきやすいポイント

  • SSH 鍵設定:デプロイマシンの公開鍵をサーバーに登録する手順が初心者には不明確
  • プラグインのインストール:プラグインごとに異なるコマンドがあり、ドキュメントを参照する必要がある

Coolify のセットアップ(Docker ベース)

ステップ1:Coolify のインストール

# VPS にSSH でログイン
ssh root@your-server-ip

# Coolify インストールスクリプトを実行
curl -fsSL https://get.coollabs.io/coolify/install.sh | bash

# インストール完了後、ブラウザで https://your-server-ip:port にアクセス
# 初期パスワードを設定し、ダッシュボードにログイン

ステップ2:新規プロジェクトの作成

ダッシュボード → 新規プロジェクト → プロジェクト名を入力 → 作成

ステップ3:GitHub リポジトリからのデプロイ設定

プロジェクト → 新規サービス → Git連携 → GitHub App を認可
→ リポジトリを選択 → ブランチを指定(例:main)
→ ビルドコマンドを入力(例:npm run build)
→ 「Auto Deploy on Push」を有効化

ステップ4:PostgreSQL の追加

プロジェクト → 新規サービス → PostgreSQL を選択
→ バージョンを選択(例:15)
→ ユーザー名・パスワードを設定
→ アプリケーションと接続

所要時間:1〜2時間

つまづきやすいポイント

  • Docker Swarm の概念:複数サーバーを管理する場合、Swarm のマネージャー・ワーカーの役割を理解する必要がある
  • UI の複雑性:設定項目が多く、初心者は「どこをどう設定するのか」が不明確になりやすい
  • リソース消費:Coolify 自体がメモリを消費するため、小さな VPS では動作が遅い

Dokploy のセットアップ(Docker Compose ベース)

ステップ1:Dokploy のインストール

# VPS にSSH でログイン
ssh root@your-server-ip

# Docker と Docker Compose をインストール(未インストールの場合)
curl -fsSL https://get.docker.com | sh
sudo usermod -aG docker $USER

# Dokploy をインストール
curl -fsSL https://dokploy.com/install.sh | sh

# ブラウザで https://your-server-ip:3000 にアクセス
# 初期パスワードを設定し、ダッシュボードにログイン

ステップ2:Docker Compose でのアプリケーション定義

# docker-compose.yml
version: '3.8'
services:
  web:
    build:
      context: .
      dockerfile: Dockerfile
    ports:
      - "3000:3000"
    environment:
      - DATABASE_URL=postgresql://user:password@db:5432/myapp
      - NODE_ENV=production
    depends_on:
      - db
    restart: always

  db:
    image: postgres:15-alpine
    environment:
      - POSTGRES_USER=user
      - POSTGRES_PASSWORD=password
      - POSTGRES_DB=myapp
    volumes:
      - postgres_data:/var/lib/postgresql/data
    restart: always

volumes:
  postgres_data:

ステップ3:Dokploy ダッシュボードからのデプロイ

ダッシュボード → 新規プロジェクト → Docker Compose を選択
→ docker-compose.yml の内容をペースト
→ デプロイボタンをクリック

ステップ4:GitHub 連携(自動デプロイ)

プロジェクト → Git連携 → GitHub リポジトリを選択
→ ブランチを指定 → 自動デプロイを有効化

所要時間:30分〜1時間

つまづきやすいポイント

  • Docker Compose の構文:YAML ファイルのインデントやキーを正確に記述する必要がある
  • 環境変数の管理:アプリケーションとデータベース間での環境変数参照が複雑になる場合がある

セルフホストPaaS導入コスト計算表

セルフホストPaaSの導入を検討する際、実際のコストを正確に計算することは重要です。以下は、初期投資・月額費用・保守工数を含めた総合的なコスト比較です。

初期投資とランニングコスト

項目DokkuCoolifyDokploy
VPS初期費用¥0(月額制)¥0(月額制)¥0(月額制)
セットアップ時間30分1〜2時間30分〜1時間
セットアップ人件費¥1,500¥3,000〜6,000¥1,500〜3,000
推奨VPSスペック2GB RAM2GB RAM2GB RAM
月額VPS費用¥715〜830¥715〜830¥715〜830
月次保守工数1〜2時間2〜3時間1〜2時間
月額保守人件費¥3,000〜6,000¥6,000〜9,000¥3,000〜6,000
年間総コスト¥12,180〜15,780¥15,180〜18,780¥12,180〜15,780

VPS 業者別の月額費用比較

VPS 業者2GB RAM推奨度
Hetzner (ドイツ)€4.99 ≈ ¥715⭐⭐⭐⭐⭐ コスパ最高
ConoHa (日本)¥830⭐⭐⭐⭐ 日本サーバー
KAGOYA (日本)¥715⭐⭐⭐⭐ Dokku推奨
さくらVPS (日本)¥1,738⭐⭐⭐ 老舗
AWS t3.small$11 ≈ ¥1,540⭐⭐ 割高
DigitalOcean$6 ≈ ¥840⭐⭐⭐⭐ 安定

クラウドPaaS との年間コスト比較

Vercel Pro:
  月額:$20 = ¥2,200
  年間:¥26,400

Firebase Blaze(小規模):
  月額:$0〜50 = ¥0〜5,500
  年間:¥0〜66,000

Render(中規模):
  月額:$40〜200 = ¥4,400〜22,000
  年間:¥52,800〜264,000

セルフホスト(Dokku + Hetzner):
  初期セットアップ:¥1,500
  月額:¥715 + 保守¥3,000 = ¥3,715
  年間:¥1,500 + ¥44,580 = ¥46,080

削減額:
  Vercel との比較:年間 ¥26,400 - ¥46,080 = -¥19,680(セルフホストが高い)
  ※ただし、スケール時の従量課金増加を考慮すると、セルフホストが有利になる可能性あり

自宅 Proliant 使用時の実質コスト

既に Proliant などのサーバーを保有している場合:

初期投資:¥0(既に購入済み)
月額コスト:
  - 電気代(推定100W × 24h × 30日 = 72kWh):¥700
  - インターネット:既存契約に含む
  - セットアップ人件費:¥1,500(初回のみ)

年間コスト:¥8,400 + 初回セットアップ¥1,500 = ¥9,900

削減額(Vercel との比較):¥26,400 - ¥9,900 = ¥16,500/年

安定性・信頼性の詳細比較

セルフホストPaaSを本番環境で運用する場合、「安定性」は最重要指標です。以下は、各ツールの安定性を複数の観点から比較したものです。

プロジェクト成熟度の指標

指標DokkuCoolifyDokploy
プロジェクト開始年2013年2021年2024年
総リリース数314+400+100+
GitHubスター数31,600+5,000+3,000+
フォーク数2,000+500+200+
月間更新頻度1〜2回4〜6回3〜4回
セキュリティパッチ頻度定期的定期的定期的
コミュニティサイズ大規模中規模小規模

本番運用実績

Dokku

  • ✅ 10年以上の運用実績がある
  • ✅ スタートアップから中堅企業まで、多くの組織で採用
  • ✅ Stack Overflow に 1,000+ の Q&A が存在
  • ✅ 障害事例の解決策が豊富に存在
  • ❌ 新機能は期待できない

Coolify

  • ✅ 2021年から 3年以上の運用実績
  • ✅ 2024年末時点で「本番運用に耐える」レベルに成熟
  • ✅ Discord コミュニティが活発で、トラブル時の相談が可能
  • ✅ 定期的なセキュリティアップデート
  • ⚠️ 大規模サービスでの運用事例は限定的

Dokploy

  • ⚠️ 2024年開始の新しいプロジェクト(1年未満)
  • ⚠️ 本番運用実績が限定的
  • ✅ 設計がモダンで、セキュリティに配慮
  • ✅ アップデート頻度が高く、バグ修正が速い
  • ❌ 長期運用での「未知のリスク」が存在

セキュリティ更新頻度

Dokku

2024年のセキュリティパッチ:月1回程度
対応内容:Docker セキュリティ脆弱性、プラグイン更新など

Coolify

2024年のセキュリティパッチ:月2〜3回
対応内容:重大脆弱性 4件、その他複数の修正

Dokploy

2024年のセキュリティパッチ:月1〜2回
対応内容:GitHub Actions 連携の脆弱性、環境変数管理の改善など

2025年の選択基準:あなたに最適なツールはどれ?

ここまでの情報を踏まえて、あなたの状況に最適なセルフホストPaaSを選択するためのガイドを提示します。

意思決定フローチャート

Q1: CLI 操作に慣れている?
  YES → Q2 へ
  NO → Coolify または Dokploy を検討

Q2: 5年以上の長期運用を想定している?
  YES → Dokku を推奨
  NO → Q3 へ

Q3: 複数サーバーでの分散配置が必要?
  YES → Coolify または Dokploy を推奨
  NO → Q4 へ

Q4: GitHub/GitLab との深い連携(プレビュー環境など)が必要?
  YES → Dokploy を推奨
  NO → Q5 へ

Q5: UI から全てを管理したい?
  YES → Coolify を推奨
  NO → Dokku を推奨

ユースケース別の推奨

ユースケース推奨ツール理由
個人開発・Next.js SaaSDokploy軽量・Docker Compose対応・学習曲線が短い
複数マイクロサービスDokploy または Coolifyマルチサーバー対応・サービス間通信が容易
初めてのセルフホストCoolifyUI が直感的・テンプレートが豊富
長期運用・安定性最優先Dokku10年以上の実績・仕様が変わらない
予算最小化Dokku + 自宅サーバー年間 ¥8,400 程度で運用可能
チーム開発Dokployチーム機能・権限管理が充実

各ツール選択時の注意点

Dokku を選ぶ場合

  • ✅ CLI 操作に慣れておく必要がある
  • ✅ 日本語ドキュメントを活用する(KAGOYA・ミライサーバー等)
  • ⚠️ UI がないため、初心者には敷居が高い
  • ⚠️ マルチサーバー対応がないため、スケーリングは手動対応が必要

Coolify を選ぶ場合

  • ✅ 2024年末時点で「本番運用に耐える」レベルに成熟
  • ✅ ワンクリックテンプレートで初期セットアップが高速
  • ⚠️ 月2GB 以上の RAM が必要(小さな VPS では動作が遅い)
  • ⚠️ アップグレード時に挙動が変わる可能性がある

Dokploy を選ぶ場合

  • ✅ モダンな設計で、CI/CD・ロールバック・バックアップが充実
  • ✅ 学習曲線が短く、初心者でも即座に使える
  • ⚠️ 1年未満の新しいプロジェクトで、長期運用実績がない
  • ⚠️ 日本語情報がほぼないため、トラブル時に自力で解決する必要がある

ベストプラクティス:セルフホストPaaS運用の鉄則

セルフホストPaaSを導入した後、安定的に運用するためのベストプラクティスを紹介します。

共通ベストプラクティス

1. Staging 環境を必ず用意する

本番環境と同じ構成の Staging 環境を用意し、アップグレードや新機能はまず Staging で検証してから本番に反映させます。

# Dokku の例
dokku apps:create myapp-staging
dokku postgres:create myapp-staging-db
dokku postgres:link myapp-staging-db myapp-staging

# git push で staging にデプロイ
git push dokku-staging main

2. バックアップ戦略を自動化する

PaaS 側のバックアップ機能だけに頼らず、定期的に外部ストレージ(S3・Google Cloud Storage等)へのバックアップを自動化します。

# PostgreSQL の定期バックアップ(cron 設定)
0 2 * * * pg_dump -U user myapp > /backup/myapp-$(date +\%Y\%m\%d).sql

# S3 へのアップロード
0 3 * * * aws s3 cp /backup/ s3://my-backup-bucket/dokku/ --recursive

3. リバースプロキシを明示的に管理する

Dokku・Coolify・Dokploy がどのリバースプロキシを使用しているかを把握し、設定を適切に管理します。

Dokku:Nginx(手動管理)
Coolify:内蔵リバースプロキシ
Dokploy:Traefik(自動管理)

4. ログ・メトリクスの外部収集

アプリケーションログとシステムメトリクスを外部サービス(DataDog・New Relic等)に送信し、障害時の調査を容易にします。

# Docker Compose での Prometheus + Grafana 統合例
services:
  prometheus:
    image: prom/prometheus
    volumes:
      - ./prometheus.yml:/etc/prometheus/prometheus.yml
    ports:
      - "9090:9090"

  grafana:
    image: grafana/grafana
    ports:
      - "3000:3000"
    environment:
      - GF_SECURITY_ADMIN_PASSWORD=admin

5. 定期的なセキュリティアップデート

OS・Docker・アプリケーション依存パッケージの定期更新を自動化します。

# Ubuntu でのセキュリティアップデート自動化
sudo apt install unattended-upgrades
sudo systemctl enable unattended-upgrades

よくある質問と回答

Q1: 3つのツールの中で「最も安い」のはどれ?

A:VPS 費用はどれも同じ(¥715〜830/月)です。ただし、保守工数で差が出ます。

  • Dokku:月1〜2時間(最小)
  • Coolify:月2〜3時間
  • Dokploy:月1〜2時間

自宅 Proliant を使用する場合、電気代のみ(¥700/月)で運用可能です。

Q2: 初心者でも使える?

A:各ツールの難易度は以下の通りです。

  • 最も簡単:Dokploy(UI が直感的)
  • 中程度:Coolify(UI が豊富だが設定項目が多い)
  • 最も難しい:Dokku(CLI のみ)

ただし、日本語情報の豊富さでは Dokku が圧倒的に有利です。

Q3: トラフィックが急増した場合、どう対応する?

A:各ツールの対応方法は異なります。

  • Dokku:手動でサーバーを追加し、ロードバランサーを設定
  • Coolify:複数サーバーを UI から追加し、Docker Swarm で自動負荷分散
  • Dokploy:複数サーバーに Docker Compose でスケーリング

予測可能なトラフィック増加の場合は事前に対応可能ですが、スパイク的な急増には対応が難しいため、クラウドPaaS の自動スケーリング機能が有利です。

Q4: セキュリティはどのツールが最も安全?

A:3つのツールはすべて定期的なセキュリティアップデートを実施しており、大きな差はありません。ただし:

  • Dokku:10年以上の運用で、既知の脆弱性がほぼ全て修正されている
  • Coolify:2024年末に 4件の重大セキュリティ修正を実施
  • Dokploy:新しいプロジェクトのため、未知の脆弱性のリスクがある

セキュリティ重視の場合は、Dokku を選択するのが無難です。

Q5: データベースのバックアップはどうする?

A:各ツールでの推奨方法:

# Dokku の場合
dokku postgres:export myapp-db > backup.sql

# Coolify の場合
# UI から「Backups」タブでワンクリックバックアップ

# Dokploy の場合
# 自動バックアップ機能を設定し、外部ストレージに送信

本番環境では、PaaS 側のバックアップ機能に加えて、外部ストレージへの定期バックアップを自動化することが重要です。


最終的な推奨:2025年はどれを選ぶべき?

2024年末から2025年初にかけての最新情報を踏まえて、最終的な推奨を示します。

安定性最優先の場合

推奨:Dokku

理由:

  • 10年以上の運用実績
  • 仕様がほぼ変わらない(長期運用に有利)
  • 日本語ドキュメント・参考情報が豊富
  • トラブル時の解決策が見つかりやすい

注意:CLI 操作に慣れる必要があります。

UI と機能のバランス重視の場合

推奨:Coolify

理由:

  • 2024年末時点で「本番運用に耐える」レベルに成熟
  • UI から全ての操作が可能
  • マルチサーバー対応で、将来的なスケーリングも容易
  • ワンクリックテンプレートで初期セットアップが高速

注意:メモリ消費が多いため、最低 2GB RAM は必要です。

モダンな開発体験重視の場合

推奨:Dokploy

理由:

  • 組み込み CI/CD で GitHub/GitLab との連携が深い
  • プレビュー環境・ロールバック・バックアップが標準装備
  • 学習曲線が短く、初心者でも即座に使える
  • Docker Compose ネイティブ対応で、複雑なマイクロサービス構成も簡潔に定義可能

注意:1年未満の新しいプロジェクトで、長期運用実績がありません。本番環境での採用は十分な検証が必須です。


まとめ

セルフホストPaaSの選択は、あなたの「優先順位」によって大きく変わります。

  • 「何があっても壊れない」を重視Dokku
  • 「使いやすさと機能のバランス」を重視Coolify
  • 「モダンな開発体験」を重視Dokploy

2025年は、3つのツールが異なる方向で進化を遂げています。Dokku は「枯れた安定性」を、Coolify は「実用的な成熟」を、Dokploy は「モダン機能の急速な拡充」を実現しています。

年間¥8,000〜¥50,000 程度のコスト削減と、インフラへの完全なコントロールが得られるセルフホストPaaS。クラウドPaaS の高い月額費用に悩んでいるなら、一度検討する価値は十分にあります。

あなたの状況に最適なツールを選択し、安定的で経済的なセルフホスト運用を実現してください。

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