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フリーランスSEが統合失調感情障害で退場決断:職場ストレスから回復までの30日間

👤 いわぶち 📅 2025-12-27 ⭐ 4.8点 ⏱️ 12m
フリーランスSEが統合失調感情障害で退場決断:職場ストレスから回復までの30日間

ポッドキャスト

🎙️ 音声: ずんだもん / 春日部つむぎ(VOICEVOX)

📌 1分で分かる記事要約

  • 10月のマネージャー退職が転機:慕っていた上司の離職がチーム全体の士気低下を招き、その後の職場環境悪化の基盤となった
  • 12月に急変:新マネージャーの詰めが引き金:タスク誤認の叱責、理由追及、急な役員説明指示で集中力喪失と不眠が悪化
  • 統合失調感情障害と診断:職場ストレスが発症・悪化要因となり、レキサルティ処方で反芻思考は減少したが不眠副作用が新たな課題に
  • 薬物療法の二重苦:レキサルティの不眠副作用対策としてクービビック併用で睡眠は改善したものの、体調限界に達する
  • 準委任契約解除への決断:フリーランスの権利を理解し、医師の診断書を活用した正当な退場手続きが必要

📝 結論

フリーランスSEとして働く中で、職場の人間関係悪化と精神疾患が重なると、個人の努力だけでは対応不可能な状況に陥ります。本記事では、実際のケーススタディを通じて、統合失調感情障害の発症経緯、薬物療法の効果と副作用、そして準委任契約の解除手順を解説します。医師の診断書を活用し、法的根拠に基づいた正当な退場を実現するための具体的なステップを理解することで、同じ状況にある人々の判断材料となるでしょう。


職場環境の急変:10月から12月までの3ヶ月間

マネージャー退職による士気低下の構造

2025年10月、フリーランスSEが所属する現場で「慕っていたマネージャー」が退職しました。この出来事が、その後の連鎖反応の「全ての始まり」となったのです。

管理職の離職がもたらす組織的影響は想像以上に大きいものです。中間管理職が退職すると、以下のような現象が生じやすくなります:

  • 責任の空白:業務指示や判断の遅延
  • 若手流出:経営と現場の分断による優秀人材の早期離脱
  • チーム全体のモチベーション喪失:熱量消失による「静かな退職」(最低限の業務のみ)の誘発

慕っていたマネージャーの存在は、単なる上司ではなく、心理的安全性を提供する重要な支えでした。その喪失は、本人の意識以上にメンタルヘルスに影響を及ぼしたのです。

12月の「仕事がしづらい」異変

2025年12月に入ると、新しい現象が起きました。「仕事がしづらい」「仕事に集中できない」という異変です。

この時期、複数の要因が重なっていました:

  1. 人手不足の加速:2025年は団塊世代が全員75歳以上となり、生産年齢人口が減少。企業の人材需要と供給がミスマッチ
  2. ミッドライフ・クライシス:40~50代正社員の53%が中年危機を自覚し、仕事パフォーマンス低下を経験
  3. 新マネージャーの「詰め」:タスク状況の誤認を指摘され、「なぜ?」「どのくらいかかる?」といった理詰めの追及が増加

新しいマネージャーは責任重く、裁量不足で疲弊していたのかもしれません。その圧力が部下に伝染し、エンゲージメント低下を加速させていました。


統合失調感情障害の診断と治療開始

心療内科での診断

職場での異変が続く中、本人は前からかかっていた心療内科を受診しました。その結果、統合失調感情障害との診断を受けたのです。

統合失調感情障害とは、統合失調症の症状(幻聴、妄想、思考混乱)と気分障害(うつ状態、躁状態)が同時に現れる精神疾患です。本ケースでは以下の症状が報告されていました:

  • 陽性症状:反芻思考(同じ考えが何度も浮かぶ)、妄想的な思考パターン
  • 陰性症状:集中力・注意力低下、意欲減退
  • 認知障害:テレワーク孤立や評価不安による集中力の著しい低下

職場ストレス(新マネージャーの詰め、人手不足)が発症・悪化要因として一致していました。

レキサルティの処方と初期効果

医師は**レキサルティ(ブレクスピプラゾール)**を処方しました。これは統合失調症治療の新しい薬剤で、ドーパミンD2・セロトニン5-HT1A受容体への部分作動薬として機能します。

期待される効果:

  • ドーパミン過剰/不足を調整し、気分の安定・意欲向上
  • セロトニン系促進で抗不安・抗うつ効果
  • 幻聴・妄想(陽性症状)と意欲減退・感情平板化(陰性症状)の同時改善

用法:

  • 成人1日1回1mg開始
  • 4日以上空けて2mgへ増量

実際、服用から3週間後には反芻思考・妄想が減少という主作用が確認されました。これは効果的な薬物療法の証拠でした。


予期しない副作用と二重苦の開始

レキサルティの不眠副作用

しかし、良好な効果の一方で、予期しない問題が生じました。レキサルティの主な副作用として報告される不眠(4.5%)が顕著に現れたのです

服用3週間後から不眠が目立つようになり、本人は医師に「ここまで不眠になるのは聞いていない」と報告しました。この副作用は以下の関連症状と併発しやすい傾向があります:

  • アカシジア(5.1%):じっとしていられない感覚
  • 頭痛(4.5%)
  • 激越(1.8%):興奮状態

ドーパミン調整による興奮抑制の反動で、睡眠障害が招かれていたのです。

趣味の喪失と集中力の悪化

不眠と並行して、別の変化が起きました。趣味のドリップコーヒーをする頻度が少なくなっていたのです。

これは以下の要因による意欲低下を示唆していました:

  • 鎮静作用・眠気(傾眠2.0%)による日中活動意欲低下
  • 体重増加(3.1%)に伴う食欲変化とだるさ
  • 生活リズムの乱れ:不眠と日中の眠気が両立する状況

陽性症状(反芻思考)の改善は進んでいたものの、陰性症状(意欲低下)が新たな課題として浮上していたのです。


職場での危機的状況:12月24日~27日

12月24日:午後休暇を取得

12月24日、仕事に集中できず、午後休暇を取得しました。「仕事に手がつかない状況」が顕在化した最初の兆候です。

この時点で、レキサルティの副作用(眠気・注意力低下)が業務着手困難を招いていました。

12月25日:タスク誤認と叱責、急な役員指示

翌日の朝、新マネージャーから急に「あのタスクは終わっていたの」と質問されました。本人は「そのタスクは案内待ちの状態だと思っていた」のですが、その対応が良くなかったとして叱責されたのです。

その直後、さらに追い打ちをかけるように「役員明日説明があるから今日、明日で行え」という急な指示が下されました。

この瞬間が転機となりました。

この出来事がきっかけで「急におかしくなった」と本人は報告しています。レキサルティの副作用(激越1.8%、不眠持続、認知機能改善の遅れ)と職場ストレスが重なり、注意力低下・感情高ぶりが引き起こされたのです。

その日は「休む暇なく働き続けた」という過労状態に陥りました。

12月26日:キャパオーバーと先送り拒否

複数の打ち合わせが行われましたが、本人のキャパシティは既にオーバーしていました。「休みたいモード」だったにもかかわらず、「明日実施できますか?」と聞かれて「頑張る」と答えてしまったのです。

しかし、その直後に「年明けに行いたい」と伝えると、マネージャーからは「理由は?その工程にどのくらいかかる?見通しがないということは早くできるかもしれない」という理詰めの追及を受けました。

先送りする気はない様子だったのです。

12月27日:役員説明休暇とクービビック処方

12月27日の役員説明を前に、本人はほとんど眠れず、「かなりリスキーだったため休んだ」と判断しました。

その日のうちに心療内科を受診し、不眠を伝えて**クービビック(レンボレキサント)**を処方されました。

クービビックはオレキシン受容体拮抗薬で、覚醒を抑制し入眠・中途覚醒を改善します。レキサルティの不眠副作用に対する標準的な対応です。


薬物療法の複雑性:クービビック併用と生活の混乱

帰宅後の消化不良と睡眠障害

帰宅後、気分が良くないため、家族と一緒に町田商店でラーメンと白飯を食べました。レキサルティの副作用による食欲亢進と、ストレス食いが重なった結果です。

しかし帰宅後、「お腹が苦しい状態」になってしまいました。これはレキサルティの副作用(便秘・消化機能鈍化)とラーメン大食による胃もたれの組み合わせです。

その状態でクービビックを飲んで寝ようとしたのですが、飼い犬の柴犬さくらが「うるさく」なり、トイレに連れて行ったり遊びに付き合ったりして、1時間くらい起きた後にやっと寝られました

レキサルティとクービビックの併用で眠気が増強される一方で、ペットの騒がしさで覚醒が促進され、相反する作用が同時に働いていたのです。

12月28日:クービビック効果の実感と回復の兆し

翌朝、転機が訪れました。

「良く眠れて、昨日と比べると気分が良い」

趣味のドリップコーヒーを入れ、この日記を書いている。年末休みなのでゆっくり過ごそう——本人の記述からは、明らかな改善が感じられます。

クービビックの初回効果(入眠改善)と年末休暇によるストレス軽減が、レキサルティの副作用(不眠4.5%)を緩和させたのです。

  • 睡眠獲得:オレキシン受容体阻害で入眠・中途覚醒が改善
  • 気分向上:休暇による新マネージャーの詰めプレッシャー軽減
  • 趣味再開:意欲向上の兆候として、コーヒーを淹れる行動が復活

退場決断:フリーランスの選択肢

エージェントへの退場意思伝達

12月27日のクービビック処方を経て、本人はフリーランスエージェントに退場(辞めたい)の意思を伝えました

理由は明確でした:「もう続けられない。私の体は言っていた」

この決断は、単なる感情的な逃げではなく、医学的根拠に基づいた判断でした。統合失調感情障害の診断、レキサルティとクービビック併用による副作用の管理、そして職場ストレスの継続的な悪化——これらが重なった時、個人の努力だけでは対応不可能な状況が明らかになったのです。

準委任契約の法的特性

本人の契約形態は準委任契約でした。既に3ヶ月の契約が結ばれていた状況です。

準委任契約の解除について、重要な法的ポイントがあります:

フリーランス側からの解除は民法656条により「いつでも解除可能」です。

  • 3ヶ月契約中途でも即時・任意での解除が可能
  • 新法の30日前予告義務は発注者(クライアント/エージェント)側の責任であり、フリーランス側に課されない
  • ただし、契約書に「○日前予告」条項があれば遵守が必須

本ケースでは、体調不良(統合失調感情障害の診断書)が「帰責性なし」の正当理由となり、即時合意を狙える状況でした。


契約解除手順:診断書の重要性

診断書の役割と作成依頼

契約解除で診断書は法的には必須ではありませんが、体調不良を正当理由にエージェント交渉する際は強く推奨されます

診断書があることで以下のメリットが生じます:

  • 「体は続けられない」という主張の客観的証明
  • 報酬未払い・違約金リスクの回避
  • クライアント側の合意を得やすくなる可能性

医師に伝えるべき具体的内容:

  1. 症状の詳細:陽性症状(妄想・幻聴)、陰性症状(意欲低下)
  2. 日常生活への影響:食事・金銭管理・仕事集中不能の4段階評価
  3. 職場での実例:12月24~27日の欠勤・ミス・趣味減少
  4. 就労状況:SE業務の特性、休暇、薬副作用の詳細

診断書には「仕事に従事することが困難である」という医学的判断が記載される必要があります。

契約解除の交渉プロセス

ステップ1:契約書の確認

  • エージェントに契約書の共有を依頼
  • 「○日前予告」条項の有無を確認
  • 解除に関する条項をすべてチェック

ステップ2:診断書の準備

  • 次回受診時(年内可能)で診断書を依頼
  • お薬手帳・診察券・日記(症状経過)を医師に提出
  • 空欄がないか確認

ステップ3:エージェント/クライアント交渉

  • 誠意ある対応で話し合い
  • 体調不良という正当理由を伝える
  • 診断書を提示

ステップ4:合意書の作成

  • 契約解除合意書を作成
  • 解除日・報酬清算条項・原状回復条件を明記
  • 双方署名

リスク管理:未払い報酬と違約金

契約解除時に注意すべきリスクがあります:

  • 報酬未払い:業務完了分の報酬は60日以内に支払われるべき
  • 違約金条項:契約書に違約金が定められている場合、交渉対象
  • 信頼関係損失:次の案件に影響する可能性

対策:

  • メール・議事録など証拠を残す
  • 合意不達時は内容証明郵便で解除通知を送付
  • 必要に応じて弁護士に相談

統合失調感情障害とフリーランス:構造的な問題

なぜフリーランスSEは脆弱なのか

フリーランスSEが精神疾患に陥りやすい構造的理由があります:

  1. 客先常駐による孤立:同僚との関係構築が困難で、心理的安全性が低い
  2. 納期プレッシャーの集中:直接的な上司関係が希薄で、圧力が直結する
  3. 上司認識のズレ:新マネージャーとのコミュニケーション不足が誤認につながりやすい
  4. 休暇取得の困難さ:案件の進行状況に左右され、十分な休養が取れない

本ケースでは、これらすべてが重なっていました。

マネージャー退職の連鎖効果

10月のマネージャー退職が「全ての始まり」だったのは、単なる上司交代ではなく、心理的安全性の喪失を意味していました。

慕っていたマネージャーが提供していたもの:

  • 部下の話に耳を傾ける姿勢
  • 判断の裁量と責任のバランス
  • 評価の透明性と納得感

新マネージャーは責任重く、その圧力を部下に「詰め」として伝えてしまいました。この構造的な問題は、個人の努力では解決不可能だったのです。


回復への道:年末休暇から新年へ

12月28日の改善と今後の課題

クービビック処方後の初朝、本人は「良く眠れて気分が良い」と報告しました。これは重要な転機です。

しかし、注意すべき点があります:

  • 副作用管理の継続:レキサルティとクービビックの併用は眠気・ふらつきを増強する可能性がある
  • 職場復帰の不確実性:年末休暇中の改善が、年明けの職場ストレスでどう変化するか不明
  • 薬物療法の長期効果:統合失調感情障害の治療には数ヶ月以上の継続が必要

フリーランスの選択肢

本人が選んだ「退場」は、以下の理由で妥当な判断でした:

  1. 医学的根拠:統合失調感情障害の診断により、就労困難が客観的に証明される
  2. 法的権利:準委任契約はいつでも解除可能という民法の保護がある
  3. 自己保護:体調悪化が継続する職場環境から身を守る必要性

一方で、別の選択肢も存在します:

  • 配置転換の交渉:新マネージャーとの関係改善、別案件への移動
  • 休職制度の活用:医師の診断書に基づいた休職で、治療に専念
  • 業務調整:現在の案件を続けながら、タスク量や納期を調整

医学的なポイント:薬物療法の理解

レキサルティの効果と副作用のバランス

レキサルティは統合失調症治療の有効な選択肢ですが、個人差が大きい薬剤です。

本ケースの経過:

  • 効果:反芻思考・妄想減少(陽性症状改善)
  • 副作用:不眠4.5%、頭痛4.5%、アカシジア5.1%、体重増加3.1%

副作用が主作用と並行して現れたため、医師への報告と用量調整が重要でした。

オレキシン受容体拮抗薬(クービビック)の位置づけ

クービビックは不眠対策の標準的な選択肢です。

利点:

  • 入眠・中途覚醒の改善に有効
  • 依存性が低い
  • 翌日への眠気が比較的少ない

注意点:

  • レキサルティとの併用で眠気が増強される可能性
  • CYP3A阻害による相互作用
  • 自動車運転など危険操作の回避が必須

結論:フリーランスSEが知るべき3つのこと

1. 職場環境の変化は心身に大きな影響を与える

マネージャー退職による士気低下、新マネージャーの詰めといった環境変化は、単なる「仕事のしづらさ」ではなく、精神疾患の発症・悪化に直結します。

「何かがおかしい」という違和感を感じたら、早期に医療機関を受診することが重要です。

2. 医師の診断書は法的な武器になる

統合失調感情障害などの診断書は、契約解除交渉において強力な根拠となります。

「体は続けられない」という主張を客観的に証明できるため、報酬未払いや違約金リスクを大幅に軽減できます。

3. 準委任契約はいつでも解除可能

フリーランスSEの多くが準委任契約で働いていますが、この契約形態は「いつでも解除可能」という強みを持っています。

適切な手続きと診断書があれば、正当な理由で退場できるのです。


実践的なチェックリスト

フリーランスSEで本記事の状況に該当する場合、以下のチェックリストを参考にしてください:

メンタルヘルスのチェック

  • 仕事に集中できない状態が2週間以上続いている
  • 趣味や楽しみへの興味が低下している
  • 睡眠障害(不眠または過眠)が続いている
  • 反芻思考や妄想的な考えが浮かぶ
  • 新しい上司との関係が改善されていない

医療対応のチェック

  • 心療内科の受診予約をしている
  • 症状を具体的にメモしている
  • お薬手帳を保管している
  • 診断書の必要性を医師に相談している
  • 薬の副作用について医師に報告している

法的準備のチェック

  • 契約書の内容を確認している
  • 契約形態(準委任契約など)を把握している
  • 予告期間や解除条項を理解している
  • エージェント担当者の連絡先を確認している
  • 診断書取得の具体的なタイミングを決めている

最後に

フリーランスSEとして働く選択は、自由と責任の両立を求めるものです。しかし、職場環境の悪化と精神疾患が重なった時、その負担は個人の努力では支えきれなくなります。

本記事で紹介したケースは、決して珍しいものではありません。むしろ、フリーランスの構造的な脆弱性を示す典型的な例なのです。

重要なのは、早期発見・早期対応・正当な権利行使の3点です。

「何かがおかしい」と感じたら、躊躇なく医療機関を受診してください。そして、医師の診断を武器に、自分の心身を守るための正当な判断を下してください。

フリーランスの自由は、同時に自分を守る責任も伴うのです。

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