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🎙️ 音声: ずんだもん / 春日部つむぎ(VOICEVOX)
システムエンジニアとして7年間、32インチ4Kモニターをメイン機として使い続けてきました。広大な表示領域、マルチウィンドウの快適さ、複雑なコードやログの一覧性—これらは確かに魅力的でした。
しかし、毎日の業務を重ねるうちに、気になることが増えてきました。
こうした理由から、思い切って24インチ4Kへの乗り換えを決断しました。3ヶ月の実運用を経た現在、その判断は「正解」だったと確信しています。ただし、「単純に小さくなった」わけではなく、作業スタイルの工夫と設定の追い込みが必須だったのも事実です。
この記事では、実際に32インチ4Kから24インチ4Kに乗り換えたシステムエンジニアの視点から、作業効率の変化、注意点、ベストプラクティスを詳しく解説します。
まず、なぜ24インチ4Kは「文字が小さく感じる」のか、その物理的な理由を理解することが重要です。
4K解像度(3840×2160)はどちらのサイズでも同じですが、画面サイズが違うため、1ピクセルあたりの物理的な大きさが大きく異なります。
画素密度(ppi)の計算:
ppi = √(横ピクセル数² + 縦ピクセル数²) ÷ 画面の対角インチ
= √(3840² + 2160²) ÷ インチ
これを各サイズに当てはめると:
| 項目 | 24インチ4K | 32インチ4K |
|---|---|---|
| 画素密度(ppi) | 約183.6ppi | 約137.7ppi |
| 密度比較 | 32インチより約33%高密度 | 基準値 |
| 1ピクセルの物理サイズ | 0.139mm | 0.185mm |
この数字が意味するもの:
24インチ4Kは、同じフォントサイズを表示しても、物理的には32インチ4Kの約75%のサイズになります。つまり、100%スケーリングで表示した場合、IDEのコードやターミナルの文字は「裸眼で見るには小さすぎる」レベルになるわけです。
実際に、27インチ4K(約163ppi)でも「文字が小さく感じる」という指摘が多いのに対し、24インチ4K(約183.6ppi)はそれより高密度です。つまり、スケーリングなしでの常用はほぼ不可能と考えておくべきです。
人間の視力には限界があり、一定以上の画素密度になると、通常の視距離では「ドットが見えない」領域に入ります。
実運用では、この「高精細さ」が長時間のコード読みで目の疲れを軽減するメリットになります。ただし、その恩恵を受けるには、適切なスケーリング設定が不可欠です。
32インチ4Kから24インチ4Kに乗り換えて、最初に直面するのは「文字が小さすぎて読めない」という問題です。これはスケーリング設定で大きく改善できます。
Windows 11の設定手順:
24インチ4K推奨のスケーリング値:
| スケーリング値 | 体感の作業領域 | 向いている用途 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 125% | WQHDよりやや広い | 視力が良い、近距離作業 | 文字がやや小さく感じる人も多い |
| 150% | WQHD~フルHD中間 | 最も一般的な設定 | バランスが取りやすい |
| 175% | フルHD相当 | 視力が低下気味、長時間作業 | 作業領域が限定される |
| 200% | フルHD以下 | 老眼対策 | 情報量が大幅に減る |
筆者の推奨:150%スケーリング
実運用3ヶ月の結果、150%スケーリングがシステムエンジニア業務に最適だと判断しました。理由は以下の通りです:
Macの場合は、Windows以上に「スケーリングの柔軟性」があります。
macOSの設定手順:
24インチ4Kでの推奨設定:
OSレベルのスケーリングだけでなく、アプリケーション側でも細かい調整が必要な場合があります。
VS Code(推奨設定):
settings.json に以下を追加:
{
"editor.fontSize": 14,
"editor.lineHeight": 1.6,
"editor.fontFamily": "'Courier New', monospace",
"editor.fontLigatures": true,
"window.zoomLevel": 0,
"editor.minimap.enabled": true
}
editor.fontSize: 14:フォントサイズを14ptに設定(150%スケーリング時)editor.lineHeight: 1.6:行間を広めに取って読みやすさを向上editor.fontLigatures: true:フォントの合字を有効化(コードの見栄えが向上)ターミナル(Windows Terminal / iTerm2):
ブラウザ(Chrome / Firefox / Safari):
32インチから24インチに変えて、最も体感しやすいメリットは「視線移動の減少」です。
32インチ4K時の典型的な視線パターン:
┌─────────────────────────────────────────┐
│ ファイル │ コード │ ログ │
│ ツリー │ エディタ │出力 │
│ │ │ │
│ ← 視線移動が大きい → │ │
└─────────────────────────────────────────┘
画面端のログ出力を見るたびに、首を右に振る必要がありました。特に、デバッグ時にエラーメッセージを確認する際、この「首の動き」が積み重なると疲労につながります。
24インチ4K時の視線パターン:
┌──────────────────────────────┐
│ コード │ ターミナル / ログ │
│エディタ │ │
│ │ ← 視線移動が小さい │
└──────────────────────────────┘
24インチ4Kでは、画面全体が視界に収まりやすく、視線移動が大幅に削減されます。実測では、1日あたりの首の動きが約30%減少した感覚があります。
実務への影響:
32インチ4Kでは、IDEとターミナルとブラウザとドキュメントを「常時4分割表示」できていました。しかし24インチ4Kでは、現実的には「2~3分割」が限界です。
32インチ4K時のウィンドウ配置例:
┌─────────┬──────────┬──────────┬────────┐
│ VS Code │ ターミナル│ ブラウザ │ログ監視│
│ 左30% │ 中央30% │ 右20% │ 右20% │
└─────────┴──────────┴──────────┴────────┘
この配置では、「通知を見逃さない」「複数の作業を並行できる」というメリットがありました。
24インチ4K時の最適なウィンドウ配置:
┌──────────────────┬──────────────┐
│ VS Code + ターミナル │ ブラウザ │
│ 左60% │ 右40% │
└──────────────────┴──────────────┘
ただし、この「2分割」配置だけでは物足りないため、仮想デスクトップを活用して対応しています。
Windows 11での仮想デスクトップ活用例:
切り替えは Win + Ctrl + 矢印キー で瞬時に行え、心理的には「複数の大画面を持っている」感覚になります。
実務での効果:
24インチ4Kの最大のメリットは、文字の精細さです。
150%スケーリング時でも、文字のエッジが非常に滑らかで、アンチエイリアスが効いた「高級感のある」表示になります。
具体的な変化:
→)や括弧({})などが明確に見え、コード構造の把握が容易実測では、32インチ4Kから24インチ4Kに変えた後、同じ時間コードを読んでも、目の疲れが約40%減少した感覚があります。
24インチ4Kモニターは「ニッチ」なため、実は価格面での優位性が思ったより小さいという現実があります。
市場の傾向(2025年時点):
つまり、「定価ベース」では24インチ4Kの方が安いものの、セール前提で探すと、32インチ4Kも十分競合するという状況です。
実際の購入シミュレーション:
| 購入パターン | 24インチ4K | 32インチ4K | 差額 |
|---|---|---|---|
| 定価購入 | 約5.5万円 | 約7.5万円 | -2万円(24インチ有利) |
| セール時購入 | 約4.8万円 | 約6.0万円 | -1.2万円(24インチ有利) |
| 複数台購入(24×2) | 約9.6万円 | 約7.5万円(32×1) | +2.1万円(32インチ有利) |
結論:初期費用だけなら24インチ4Kが若干有利だが、選択肢の少なさと値引き渋さがネック
同じ4K・同世代パネルなら、サイズが小さいほど消費電力も小さくなるのが一般的です。
一般的な消費電力(公称値):
電気代の概算(月額):
前提:電気料金30円/kWh、1日8時間 × 月20日稼働、実使用時は最大値の70%で動作
月あたりの差額:約144円、年間で約1,728円
一見すると「大した差ではない」ように見えますが、5年使用を前提にすると約8,640円の差になります。
実務的な観点:
24インチ4Kのメリットは、むしろスペース効率と物理的な快適性にあります。
占有スペースの比較(外形寸法、スタンド含まず):
| 項目 | 32インチ4K | 24インチ4K |
|---|---|---|
| 幅 | 約72cm | 約54cm |
| 高さ | 約42cm | 約32cm |
| 占有面積 | 約3,024cm² | 約1,728cm² |
| 面積比 | 基準 | 約57%(32インチの6割弱) |
デスク環境への実際の影響:
在宅勤務環境での体感:
自宅の小さなデスク(奥行き60cm)で32インチ4Kを使っていた時は、常に「狭い」という感覚がありました。24インチ4Kに変更後、同じデスクが「十分な広さ」に感じられるようになりました。これは、単なる「物理的なスペース」の問題ではなく、心理的な快適性にも大きく影響しています。
24インチ4Kで150%以上のスケーリングを使う場合、一部の古いアプリケーションがうまく対応できず、UIがぼやけたり、レイアウトが崩れたりする可能性があります。
よくある問題:
対策:
事前に互換性を確認
アプリケーション側のスケーリング設定を調整
-Dsun.java2d.uiScale=1.5 を設定必要に応じてスケーリングを個別に調整
32インチ4Kでは「常時4ウィンドウ表示」が可能でしたが、24インチ4Kでは現実的には「2~3ウィンドウ」が限界です。
対策1:仮想デスクトップの活用
Win + Ctrl + D で新規デスクトップを作成対策2:ウィンドウマネージャーツールの導入
Windows 11の場合、PowerToys(Microsoft公式)の「FancyZones」機能が非常に有用です。
対策3:タブ化とウィンドウグループの活用
インフラSE・SREで、Grafana、CloudWatch、Datadogなどのダッシュボードを常時監視している場合、24インチ4Kでは「一度に見える情報量」が限定されます。
対策1:デュアル24インチ4K構成への移行
この構成なら、32インチ1枚より情報量が多く、視線移動も少ないというメリットが得られます。
対策2:モニターの「縦置き」活用
24インチ4Kをピボット対応モニターなら、**縦置き(ポートレートモード)**で使用することで、ログやドキュメントの表示に最適化できます。
┌──────┐
│ ログ │ 高さ:約72cm
│ビュー│ 幅:約54cm
│ │
└──────┘
縦置きすると、ログの「縦スクロール」が減り、ダッシュボード全体を一度に見やすくなります。
24インチ4Kは、32インチ4Kより「近い距離で見ること」になるため、姿勢が前のめりになりやすいという落とし穴があります。
対策:モニターアームの導入
推奨モニターアーム:VESA対応の単軸アーム(2,000~5,000円程度)で十分です。
24インチ4Kは、市場全体で見ると非常にニッチなカテゴリです。32インチ4Kや27インチ4Kと比べて、メーカーのラインナップが限定されているのが実情です。
国内で比較的入手しやすいモデル:
| モデル | 特徴 | 向いている人 |
|---|---|---|
| LG 24UD58-B | コスパ重視、IPS、sRGB99% | 予算重視、色再現性が必要な人 |
| LG 24MD4KL-B | Thunderbolt 3、Mac向け、高精細 | MacBook Proユーザー、リモート会議 |
| ASUS PA247CV | 業務向け、調整機能豊富 | 正確な色合わせが必要な職種 |
1. パネルタイプの確認
2. スケーリング対応の確認
3. 接続端子
4. スタンド機能
筆者の推奨:LG 24UD58-B
3ヶ月の実運用を経て、LG 24UD58-Bがシステムエンジニア向けとして最もバランスが取れていると判断しました。
乗り換え前は、「情報量が減る=効率が落ちる」と考えていました。実際、32インチ4Kの広大な表示領域は、マルチタスク作業には確かに優れていました。
3ヶ月使ってみて気づいたのは、「情報量の多さ」と「作業効率」は必ずしも比例しないということです。
体感的な効率の変化:
| 作業パターン | 32インチ4K | 24インチ4K | 変化 |
|---|---|---|---|
| 単一タスク集中 | ◎(広い) | ◎◎(集中しやすい) | 向上 |
| 複数タスク並行 | ◎◎◎(全部見える) | ◎(切り替え必要) | 低下 |
| コードレビュー | ◎◎(全体把握) | ◎◎◎(見落とし減少) | 向上 |
| デバッグ作業 | ◎(広い) | ◎◎(文字が見やすい) | 向上 |
| ドキュメント作成 | ◎(リファレンス参照) | ◎◎(集中しやすい) | 向上 |
特に向上した業務:
24インチ4Kへの乗り換えで、予想していなかったメリットが複数ありました。
1. 机が広く感じられる
32インチ4Kのときは、机に座ると「大きなモニターに囲まれている」感覚がありました。24インチ4Kに変更後、同じ机が「広い」と感じられるようになりました。これは、単なる物理的なスペースの問題ではなく、心理的な開放感につながっています。
2. 在宅勤務の「仕事モード」の切り替えが容易
小さなモニターは「仕事用」、大きなモニターは「プライベート」という心理的な区別がしやすくなりました。特にリモートワークでは、この「オンオフの切り替え」が重要です。
3. モニター周りの配線がシンプルに
24インチ4Kは消費電力が小さいため、電源アダプタが小さく、デスク周りがスッキリします。また、USB-C給電対応モデルを選べば、ケーブル本数も減ります。
一方、想定していなかった課題も出ました。
1. 仮想デスクトップへの依存度が高まった
32インチ4Kでは「全部見える」ので、仮想デスクトップをほとんど使いませんでした。24インチ4Kでは、仮想デスクトップの切り替えが「デフォルト操作」になりました。
最初は「面倒だな」と感じましたが、今では**「タスクの心理的な区切り」**になっているため、むしろメリットになっています。
2. Slack通知の見落としが増えた
複数ウィンドウを並べられないため、Slack通知を見落とすことが増えました。対策として、Slackを「常時表示デスクトップ」に配置し、定期的に確認する運用に変更しました。
3ヶ月の実運用を経て、「24インチ4K1枚」よりも「24インチ4K2枚」の方が、システムエンジニア業務には最適かもしれないという結論に達しました。
1. 情報量と視線移動のバランス
┌─────────────────┬──────────────────┐
│ 左モニター │ 右モニター │
│ IDE + ターミナル │ ブラウザ + ログ │
│ 視線移動小 │ 視線移動小 │
└─────────────────┴──────────────────┘
2. 32インチ1枚より「実効的な情報量」が多い
3. 作業パターンに応じた柔軟な配置
1. デスクスペースの必要性
2. 初期投資
ただし、作業効率の向上を考えると、この投資は回収できると考えます。
サブモニターを「同じ4K」にするか、「WQHD」にするかは、予算と用途次第です。
32インチから24インチ4Kへの乗り換えは、メリットが大きい人とそうでない人がはっきり分かれます。以下のチェックリストで、自分に合った選択かどうか判断してください。
デスク奥行きが60cm以上70cm未満?
├─ NO → 32インチ4K or 27インチ4K を検討
└─ YES ↓
単一タスク集中型?
├─ NO → 32インチ4K を継続
└─ YES ↓
複数ウィンドウ常時表示が必須?
├─ YES → デュアル24インチ4K を検討
└─ NO → 24インチ4K で OK
Step 1:スケーリングの設定(30分)
Step 2:アプリケーションの調整(1~2時間)
Step 3:ウィンドウ配置の最適化(1日~1週間)
結論:「用途と環境次第で、非常に有効な選択肢」
3ヶ月の実運用を経た現在、32インチ4Kから24インチ4Kへの乗り換えは、**私個人の業務環境においては「正解」**だったと確信しています。
あなたが以下に当てはまるなら、24インチ4Kへの乗り換えを強く推奨します:
以下に当てはまるなら、32インチ4Kの継続 or デュアル24インチ4K構成を検討してください:
**A:**用途次第です。SE業務で「文字の見やすさ」を重視するなら、24インチ4Kの高精細さは十分に活用できます。ただし、「広い作業領域」が必須なら、27インチ4Kや32インチ4Kの方が現実的です。
**A:**24インチ4Kで100%スケーリングは、多くの人にとって「文字が小さすぎる」レベルです。理想的には150%以上の設定が推奨されます。
**A:**以下の観点で判断してください:
**A:**4K@60Hzの出力に対応していれば使用可能ですが、GPUの負荷が高くなる可能性があります。事前にスペック確認をお勧めします。
**A:**いいえ。スケーリングが高くなると、実効的な作業領域は減ります。また、24インチ4Kの「高精細さ」というメリットも活かしきれません。
32インチ4Kから24インチ4Kへの乗り換えは、単なる「モニターサイズの変更」ではなく、作業スタイルと環境を最適化するための大きな決断です。
この記事で紹介した「スケーリング設定」「ウィンドウ管理」「費用対効果」「ベストプラクティス」を参考に、自分の業務環境に最適な選択をしてください。
特に、視線移動による疲労が気になっている、デスク環境が限定されているという方には、24インチ4Kへの乗り換えを心から推奨します。
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