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クラウドPaaS(Vercel・Firebase・Render)の月額費用が$20〜50と高くなる中、小規模なWebアプリケーションやAPIサーバーを運用する開発者の間で「セルフホストPaaS」への関心が急速に高まっています。
特に以下のような状況では、セルフホストが圧倒的に有利です:
2024年末から2025年初にかけて、Dokku・Coolify・Dokploy という3つの主要なセルフホストPaaSツールが、それぞれ異なる方向で進化を遂げています。本記事では、これら3つのツールを機能・安定性・コスト・学習曲線の観点から徹底比較し、あなたの状況に最適な選択肢を提示します。
まず、3つのツールの機能を一覧で比較してみましょう。
| 機能 | Dokku | Coolify | Dokploy |
|---|---|---|---|
| 管理UI | ❌ CLI のみ | ✅ フル機能GUI | ✅ シンプルGUI |
| CI/CD自動化 | ❌ 外部CI必要 | ✅ 組み込み | ✅ 組み込み |
| GitHub連携 | ✅ git push デプロイ | ✅ 自動デプロイ | ✅ 自動デプロイ |
| GitLab連携 | ✅ | ✅ | ✅ |
| HTTPS/SSL | ✅ Let’s Encrypt | ✅ 自動発行 | ✅ Traefik統合 |
| DB管理UI | ❌ CLI操作 | ✅ ダッシュボード | ✅ GUI管理 |
| 対応DB | PostgreSQL, MySQL, MongoDB, Redis | PostgreSQL, MySQL, MongoDB, Redis, DragonFly, ClickHouse | PostgreSQL, MySQL, MongoDB, MariaDB, Redis |
| 自動バックアップ | プラグイン | ✅ 標準装備 | 要設定 |
| プラグイン数 | 300+ | 少数 | 少数 |
| ビルド方式 | Heroku Buildpack, Dockerfile | Docker, Buildpack, Git | Nixpacks, Dockerfile, Buildpack, Paketo |
| ワンクリックテンプレート | ❌ | ✅ 豊富 | ❌ |
| マルチサーバー対応 | ❌ | ✅ | ✅ |
| ゼロダウンタイムデプロイ | ✅ | ✅ | ✅ |
| ロールバック機能 | ✅ CLI | ✅ GUI | ✅ GUI |
| ログ管理 | CLI | ✅ リアルタイムUI | ✅ GUI |
| 監視・メトリクス | プラグイン | ✅ 標準装備 | ✅ Grafana対応 |
| 環境変数管理 | CLI | GUI | GUI |
| Docker Compose対応 | ❌ | ✅ | ✅ ネイティブ |
| カスタムドメイン | ✅ | ✅ | ✅ |
| Webhooks | プラグイン | ✅ | ✅ |
| チーム管理 | Dokku Pro(有料) | ✅ 無料版でも可能 | 要確認 |
| 項目 | Dokku | Coolify | Dokploy |
|---|---|---|---|
| 初心者向け | ⭐⭐ | ⭐⭐⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐⭐ |
| CLI好き向け | ⭐⭐⭐⭐⭐ | ⭐⭐ | ⭐⭐ |
| 安定性 | ⭐⭐⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐ |
| 機能の豊富さ | ⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐⭐ |
| 軽量性 | ⭐⭐⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐⭐ |
プロジェクト概要
Dokkuは2013年から開発が続く、最も歴史あるセルフホストPaaSです。Herokuの設計思想を取り入れ、「git pushするだけでデプロイ」というシンプルなワークフローを実現しています。
2024年末〜2025年初の開発状況
安定性の評価
Dokkuの最大の強みは、その**「変わらなさ」**にあります。コアの仕様がほぼ変わらないため、5年前に構築したDokkuシステムでも、今日のドキュメントがそのまま通用します。これは長期運用において非常に重要な特性です。
実装面では以下の点が特徴的です:
デメリット
一方で、以下の点は現代的なPaaSとしては物足りない側面です:
プロジェクト概要
Coolifyは2021年に開始された比較的新しいプロジェクトですが、2024年末時点で「本番運用に耐える」レベルの機能と安定性を獲得しています。UIを重視し、初心者でも直感的に操作できる設計が特徴です。
2024年末〜2025年初の開発状況
強み:「UI付きで多機能」
Coolifyの最大の利点は、以下の点に集約されます:
実装例:GitHubからの自動デプロイ設定
Coolifyの使いやすさを実感するには、実際のセットアップを見るのが最良です。以下の流れで、GitHubリポジトリからの自動デプロイが可能です:
main)npm run build)git pushするたびに自動でビルド・デプロイが実行されるデメリット
Coolifyの欠点としては:
プロジェクト概要
Dokploy は2024年に開始された最新のセルフホストPaaSです。Vercel・Render・NetlifyなどのクラウドPaaSの「使いやすさ」を、オンプレミス環境で実現することを目指しています。
2024年末〜2025年初の開発状況
強み:「モダンなCI/CDとロールバック」
Dokploy の特徴は、クラウドPaaS的な使いやすさをセルフホスト環境で実現している点です:
実装例:Next.js アプリのデプロイ
Dokployの簡潔さを示す実装例です:
# Dokploy での Docker Compose 定義(例)
version: '3.8'
services:
web:
image: node:18
ports:
- "3000:3000"
environment:
- DATABASE_URL=postgresql://user:pass@db:5432/myapp
- NODE_ENV=production
depends_on:
- db
db:
image: postgres:15
environment:
- POSTGRES_PASSWORD=secure_password
- POSTGRES_DB=myapp
volumes:
- postgres_data:/var/lib/postgresql/data
volumes:
postgres_data:
このファイルをDokployにアップロードするだけで、Webアプリとデータベースが自動的にセットアップされます。
デメリット
Dokploy はまだ新しいプロジェクトであるため:
セルフホストPaaSを選ぶ際、「実際にどのくらいの時間で導入できるのか」は重要な判断基準です。以下は、各ツールの学習曲線と初期セットアップの難易度を比較したものです。
| 項目 | Dokku | Coolify | Dokploy |
|---|---|---|---|
| 公式ドキュメント充実度 | ⭐⭐⭐⭐⭐ 非常に充実 | ⭐⭐⭐⭐ 良好 | ⭐⭐⭐ 標準的 |
| 日本語情報量 | ⭐⭐⭐⭐ 多い | ⭐⭐ 少ない | ⭐ 非常に少ない |
| 初心者向けチュートリアル | ⭐⭐⭐⭐⭐ 豊富 | ⭐⭐⭐ ある | ⭐⭐⭐ ある |
| 学習曲線(緩やか=初心者向け) | ⭐⭐⭐ 中程度 | ⭐⭐⭐⭐ 緩やか | ⭐⭐⭐⭐⭐ 非常に緩やか |
| 初回デプロイまでの時間 | 30分〜1時間 | 1〜2時間 | 30分〜1時間 |
| コミュニティサポート | ⭐⭐⭐⭐⭐ 活発 | ⭐⭐⭐⭐ 成長中 | ⭐⭐⭐ 小規模 |
Dokkuは10年以上の歴史があるため、日本語での解説記事が豊富です。KAGOYA・ミライサーバー・さくらインターネットなどのVPS提供企業が詳細なセットアップガイドを公開しており、初心者でも比較的簡単に導入できます。
つまづきやすいポイント
dokku config:set コマンドで環境変数を指定する必要があるこれらは一度理解すれば簡単ですが、初めての人には「なぜこんなことをするのか」が理解しにくい側面があります。
Coolifyはブラウザから操作できるため、CLI操作が苦手な人には最適です。ただし、マルチサーバー構成やDocker Swarmの概念を理解していないと、複雑な設定に迷う可能性があります。
つまづきやすいポイント
Dokploy は UI設計がシンプルで、初心者でも直感的に操作できます。ただし、2024年開始の新しいプロジェクトであるため、トラブル時に参照できる日本語情報がほぼ存在しません。
つまづきやすいポイント
セルフホストPaaSを導入する前に、クラウドPaaS(Vercel・Firebase・Render)との比較を理解することは重要です。以下は、実際の運用コストと手間を比較したものです。
| サービス | 月額料金 | 推奨スペック | 備考 |
|---|---|---|---|
| Vercel Pro | $20/月 | - | 1TB帯域、サーバーレス関数込み |
| Firebase Blaze | 従量課金($0〜500+) | - | 小規模無料、スケール時に高額化 |
| Render | $40〜800/月 | - | Next.js大規模アプリで高額になる可能性 |
| Dokku(VPS) | ¥715〜830/月 | 2GB RAM | Hetznel・ConoHa・さくらVPS等 |
| Coolify(VPS) | ¥715〜830/月 | 2GB RAM | 同上 |
| Dokploy(VPS) | ¥715〜830/月 | 2GB RAM | 同上 |
| 自宅Proliant | 電気代のみ | - | 初期投資済みなら最安 |
クラウドPaaS(Vercel + Firebase の例)
月額コスト:
- Vercel Pro:$20/月 = ¥2,200
- Firebase Blaze:$0〜100/月 = ¥0〜11,000
- ロードバランサー・CDN:別途費用
年間コスト:¥26,400〜159,600
特徴:
- 従量課金のため、トラフィックスパイク時に予想外の請求が発生
- スケーラビリティは自動だが、コスト管理が複雑
セルフホスト(VPS + Dokku の例)
月額コスト:
- VPS(Hetzner 2GB):¥715
- 保守工数(月2時間 × ¥3,000/時):¥6,000(換算)
年間コスト:¥8,580
特徴:
- 固定費なので、トラフィックがどう変わっても請求額は変わらない
- 保守工数は実際の時間投下であり、完全に自動化できる部分も多い
自宅Proliant(既に購入済みの場合)
月額コスト:
- VPS費用:¥0
- 電気代(推定100W × 24h × 30日 = 72kWh):¥700
年間コスト:¥8,400
特徴:
- 初期投資が既に完了していれば、実質的には電気代のみ
- Vercelとの年間差額:¥18,000〜151,200の削減
| 項目 | セルフホスト | Vercel/Firebase |
|---|---|---|
| 月額コスト | ✅ ¥715〜(90%削減可) | ❌ ¥2,000〜 |
| 自由度 | ✅ フルコントロール | ❌ プラットフォーム依存 |
| データ移行 | ✅ 容易 | ❌ Firebase特に困難 |
| スケーラビリティ | ❌ 手動対応必要 | ✅ 自動スケール |
| 運用負担 | ❌ 月1〜2時間 | ✅ ゼロメンテナンス |
| 障害対応 | ❌ 自己責任 | ✅ SLA保証 |
| 初期セットアップ | ❌ 1〜2時間 | ✅ 数分 |
| 監視・ログ | ❌ 自前構築 | ✅ 標準装備 |
セルフホスト推奨の状況
クラウドPaaS推奨の状況
実際の開発者がどのツールを選んでいるのか、そしてなぜそう選んだのかを理解することは、あなたの判断に役立ちます。以下は、2024年末〜2025年初の実例から抽出したユースケースです。
要件
推奨ツール:Dokploy
理由
git push 後の自動デプロイが即座に機能実装ステップ
# Dokploy サーバーにアクセス
# ダッシュボード → 新規プロジェクト → Docker Compose
# docker-compose.yml を作成・アップロード
version: '3.8'
services:
web:
build: .
ports:
- "3000:3000"
environment:
- DATABASE_URL=postgresql://user:pass@db:5432/myapp
db:
image: postgres:15
environment:
- POSTGRES_PASSWORD=secure_password
- POSTGRES_DB=myapp
volumes:
- postgres_data:/var/lib/postgresql/data
volumes:
postgres_data:
要件
推奨ツール:Dokploy または Coolify
理由
要件
推奨ツール:Coolify
理由
要件
推奨ツール:Dokku
理由
2024年末から2025年初にかけて、3つのツールはそれぞれ異なる方向で進化しています。以下は、各ツールの最新の開発トレンドです。
2024年末〜2025年初の主要アップデート
開発方針
Dokku の開発チームは「新機能よりも安定性」という方針を貫いています。大きな設計変更はほぼなく、既存ユーザーのアップグレード負担を最小化することを重視しています。
ユーザーへの影響
2024年末〜2025年初の主要アップデート
開発方針
Coolify は「機能豊富さ」と「実用性」のバランスを取ろうとしています。毎月複数のリリースで新機能を追加しつつ、テストを強化し(直近で60+の新テスト追加)、本番環境での信頼性を高めています。
ユーザーへの影響
2024年末〜2025年初の主要アップデート
開発方針
Dokploy は「Vercel・Render のような使いやすさをセルフホストで実現する」という明確なビジョンを持っています。新機能追加のペースが速く、ユーザーからのフィードバックを積極的に反映しています。
ユーザーへの影響
ここからは、実際にセットアップする際の具体的な手順を、各ツール別に解説します。
ステップ1:Dokku のインストール
# VPS にSSH でログイン
ssh root@your-server-ip
# Dokku インストールスクリプトをダウンロード・実行
wget https://raw.githubusercontent.com/dokku/dokku/v0.34.0/bootstrap.sh
sudo DOKKU_TAG=v0.34.0 bash bootstrap.sh
# インストール完了後、ブラウザで http://your-server-ip にアクセス
# SSH 公開鍵を登録し、初期セットアップを完了
ステップ2:新規アプリケーションの作成
# サーバー上でアプリを作成
dokku apps:create myapp
# ローカルマシンから Git リモートを追加
git remote add dokku dokku@your-server-ip:myapp
# デプロイ
git push dokku main
ステップ3:PostgreSQL の追加
# PostgreSQL プラグインをインストール
sudo dokku plugin:install https://github.com/dokku/dokku-postgres.git
# データベースを作成
dokku postgres:create myapp-db
# アプリに DB をリンク
dokku postgres:link myapp-db myapp
# 環境変数が自動的に DATABASE_URL として設定される
ステップ4:HTTPS の設定
# Let's Encrypt プラグインをインストール
sudo dokku plugin:install https://github.com/dokku/dokku-letsencrypt.git
# ドメインを設定
dokku domains:set myapp example.com
# HTTPS 証明書を自動取得
dokku letsencrypt:enable myapp
所要時間:30分〜1時間
つまづきやすいポイント
ステップ1:Coolify のインストール
# VPS にSSH でログイン
ssh root@your-server-ip
# Coolify インストールスクリプトを実行
curl -fsSL https://get.coollabs.io/coolify/install.sh | bash
# インストール完了後、ブラウザで https://your-server-ip:port にアクセス
# 初期パスワードを設定し、ダッシュボードにログイン
ステップ2:新規プロジェクトの作成
ダッシュボード → 新規プロジェクト → プロジェクト名を入力 → 作成
ステップ3:GitHub リポジトリからのデプロイ設定
プロジェクト → 新規サービス → Git連携 → GitHub App を認可
→ リポジトリを選択 → ブランチを指定(例:main)
→ ビルドコマンドを入力(例:npm run build)
→ 「Auto Deploy on Push」を有効化
ステップ4:PostgreSQL の追加
プロジェクト → 新規サービス → PostgreSQL を選択
→ バージョンを選択(例:15)
→ ユーザー名・パスワードを設定
→ アプリケーションと接続
所要時間:1〜2時間
つまづきやすいポイント
ステップ1:Dokploy のインストール
# VPS にSSH でログイン
ssh root@your-server-ip
# Docker と Docker Compose をインストール(未インストールの場合)
curl -fsSL https://get.docker.com | sh
sudo usermod -aG docker $USER
# Dokploy をインストール
curl -fsSL https://dokploy.com/install.sh | sh
# ブラウザで https://your-server-ip:3000 にアクセス
# 初期パスワードを設定し、ダッシュボードにログイン
ステップ2:Docker Compose でのアプリケーション定義
# docker-compose.yml
version: '3.8'
services:
web:
build:
context: .
dockerfile: Dockerfile
ports:
- "3000:3000"
environment:
- DATABASE_URL=postgresql://user:password@db:5432/myapp
- NODE_ENV=production
depends_on:
- db
restart: always
db:
image: postgres:15-alpine
environment:
- POSTGRES_USER=user
- POSTGRES_PASSWORD=password
- POSTGRES_DB=myapp
volumes:
- postgres_data:/var/lib/postgresql/data
restart: always
volumes:
postgres_data:
ステップ3:Dokploy ダッシュボードからのデプロイ
ダッシュボード → 新規プロジェクト → Docker Compose を選択
→ docker-compose.yml の内容をペースト
→ デプロイボタンをクリック
ステップ4:GitHub 連携(自動デプロイ)
プロジェクト → Git連携 → GitHub リポジトリを選択
→ ブランチを指定 → 自動デプロイを有効化
所要時間:30分〜1時間
つまづきやすいポイント
セルフホストPaaSの導入を検討する際、実際のコストを正確に計算することは重要です。以下は、初期投資・月額費用・保守工数を含めた総合的なコスト比較です。
| 項目 | Dokku | Coolify | Dokploy |
|---|---|---|---|
| VPS初期費用 | ¥0(月額制) | ¥0(月額制) | ¥0(月額制) |
| セットアップ時間 | 30分 | 1〜2時間 | 30分〜1時間 |
| セットアップ人件費 | ¥1,500 | ¥3,000〜6,000 | ¥1,500〜3,000 |
| 推奨VPSスペック | 2GB RAM | 2GB RAM | 2GB RAM |
| 月額VPS費用 | ¥715〜830 | ¥715〜830 | ¥715〜830 |
| 月次保守工数 | 1〜2時間 | 2〜3時間 | 1〜2時間 |
| 月額保守人件費 | ¥3,000〜6,000 | ¥6,000〜9,000 | ¥3,000〜6,000 |
| 年間総コスト | ¥12,180〜15,780 | ¥15,180〜18,780 | ¥12,180〜15,780 |
| VPS 業者 | 2GB RAM | 推奨度 |
|---|---|---|
| Hetzner (ドイツ) | €4.99 ≈ ¥715 | ⭐⭐⭐⭐⭐ コスパ最高 |
| ConoHa (日本) | ¥830 | ⭐⭐⭐⭐ 日本サーバー |
| KAGOYA (日本) | ¥715 | ⭐⭐⭐⭐ Dokku推奨 |
| さくらVPS (日本) | ¥1,738 | ⭐⭐⭐ 老舗 |
| AWS t3.small | $11 ≈ ¥1,540 | ⭐⭐ 割高 |
| DigitalOcean | $6 ≈ ¥840 | ⭐⭐⭐⭐ 安定 |
Vercel Pro:
月額:$20 = ¥2,200
年間:¥26,400
Firebase Blaze(小規模):
月額:$0〜50 = ¥0〜5,500
年間:¥0〜66,000
Render(中規模):
月額:$40〜200 = ¥4,400〜22,000
年間:¥52,800〜264,000
セルフホスト(Dokku + Hetzner):
初期セットアップ:¥1,500
月額:¥715 + 保守¥3,000 = ¥3,715
年間:¥1,500 + ¥44,580 = ¥46,080
削減額:
Vercel との比較:年間 ¥26,400 - ¥46,080 = -¥19,680(セルフホストが高い)
※ただし、スケール時の従量課金増加を考慮すると、セルフホストが有利になる可能性あり
既に Proliant などのサーバーを保有している場合:
初期投資:¥0(既に購入済み)
月額コスト:
- 電気代(推定100W × 24h × 30日 = 72kWh):¥700
- インターネット:既存契約に含む
- セットアップ人件費:¥1,500(初回のみ)
年間コスト:¥8,400 + 初回セットアップ¥1,500 = ¥9,900
削減額(Vercel との比較):¥26,400 - ¥9,900 = ¥16,500/年
セルフホストPaaSを本番環境で運用する場合、「安定性」は最重要指標です。以下は、各ツールの安定性を複数の観点から比較したものです。
| 指標 | Dokku | Coolify | Dokploy |
|---|---|---|---|
| プロジェクト開始年 | 2013年 | 2021年 | 2024年 |
| 総リリース数 | 314+ | 400+ | 100+ |
| GitHubスター数 | 31,600+ | 5,000+ | 3,000+ |
| フォーク数 | 2,000+ | 500+ | 200+ |
| 月間更新頻度 | 1〜2回 | 4〜6回 | 3〜4回 |
| セキュリティパッチ頻度 | 定期的 | 定期的 | 定期的 |
| コミュニティサイズ | 大規模 | 中規模 | 小規模 |
Dokku
Coolify
Dokploy
Dokku
2024年のセキュリティパッチ:月1回程度
対応内容:Docker セキュリティ脆弱性、プラグイン更新など
Coolify
2024年のセキュリティパッチ:月2〜3回
対応内容:重大脆弱性 4件、その他複数の修正
Dokploy
2024年のセキュリティパッチ:月1〜2回
対応内容:GitHub Actions 連携の脆弱性、環境変数管理の改善など
ここまでの情報を踏まえて、あなたの状況に最適なセルフホストPaaSを選択するためのガイドを提示します。
Q1: CLI 操作に慣れている?
YES → Q2 へ
NO → Coolify または Dokploy を検討
Q2: 5年以上の長期運用を想定している?
YES → Dokku を推奨
NO → Q3 へ
Q3: 複数サーバーでの分散配置が必要?
YES → Coolify または Dokploy を推奨
NO → Q4 へ
Q4: GitHub/GitLab との深い連携(プレビュー環境など)が必要?
YES → Dokploy を推奨
NO → Q5 へ
Q5: UI から全てを管理したい?
YES → Coolify を推奨
NO → Dokku を推奨
| ユースケース | 推奨ツール | 理由 |
|---|---|---|
| 個人開発・Next.js SaaS | Dokploy | 軽量・Docker Compose対応・学習曲線が短い |
| 複数マイクロサービス | Dokploy または Coolify | マルチサーバー対応・サービス間通信が容易 |
| 初めてのセルフホスト | Coolify | UI が直感的・テンプレートが豊富 |
| 長期運用・安定性最優先 | Dokku | 10年以上の実績・仕様が変わらない |
| 予算最小化 | Dokku + 自宅サーバー | 年間 ¥8,400 程度で運用可能 |
| チーム開発 | Dokploy | チーム機能・権限管理が充実 |
Dokku を選ぶ場合
Coolify を選ぶ場合
Dokploy を選ぶ場合
セルフホストPaaSを導入した後、安定的に運用するためのベストプラクティスを紹介します。
1. Staging 環境を必ず用意する
本番環境と同じ構成の Staging 環境を用意し、アップグレードや新機能はまず Staging で検証してから本番に反映させます。
# Dokku の例
dokku apps:create myapp-staging
dokku postgres:create myapp-staging-db
dokku postgres:link myapp-staging-db myapp-staging
# git push で staging にデプロイ
git push dokku-staging main
2. バックアップ戦略を自動化する
PaaS 側のバックアップ機能だけに頼らず、定期的に外部ストレージ(S3・Google Cloud Storage等)へのバックアップを自動化します。
# PostgreSQL の定期バックアップ(cron 設定)
0 2 * * * pg_dump -U user myapp > /backup/myapp-$(date +\%Y\%m\%d).sql
# S3 へのアップロード
0 3 * * * aws s3 cp /backup/ s3://my-backup-bucket/dokku/ --recursive
3. リバースプロキシを明示的に管理する
Dokku・Coolify・Dokploy がどのリバースプロキシを使用しているかを把握し、設定を適切に管理します。
Dokku:Nginx(手動管理)
Coolify:内蔵リバースプロキシ
Dokploy:Traefik(自動管理)
4. ログ・メトリクスの外部収集
アプリケーションログとシステムメトリクスを外部サービス(DataDog・New Relic等)に送信し、障害時の調査を容易にします。
# Docker Compose での Prometheus + Grafana 統合例
services:
prometheus:
image: prom/prometheus
volumes:
- ./prometheus.yml:/etc/prometheus/prometheus.yml
ports:
- "9090:9090"
grafana:
image: grafana/grafana
ports:
- "3000:3000"
environment:
- GF_SECURITY_ADMIN_PASSWORD=admin
5. 定期的なセキュリティアップデート
OS・Docker・アプリケーション依存パッケージの定期更新を自動化します。
# Ubuntu でのセキュリティアップデート自動化
sudo apt install unattended-upgrades
sudo systemctl enable unattended-upgrades
A:VPS 費用はどれも同じ(¥715〜830/月)です。ただし、保守工数で差が出ます。
自宅 Proliant を使用する場合、電気代のみ(¥700/月)で運用可能です。
A:各ツールの難易度は以下の通りです。
ただし、日本語情報の豊富さでは Dokku が圧倒的に有利です。
A:各ツールの対応方法は異なります。
予測可能なトラフィック増加の場合は事前に対応可能ですが、スパイク的な急増には対応が難しいため、クラウドPaaS の自動スケーリング機能が有利です。
A:3つのツールはすべて定期的なセキュリティアップデートを実施しており、大きな差はありません。ただし:
セキュリティ重視の場合は、Dokku を選択するのが無難です。
A:各ツールでの推奨方法:
# Dokku の場合
dokku postgres:export myapp-db > backup.sql
# Coolify の場合
# UI から「Backups」タブでワンクリックバックアップ
# Dokploy の場合
# 自動バックアップ機能を設定し、外部ストレージに送信
本番環境では、PaaS 側のバックアップ機能に加えて、外部ストレージへの定期バックアップを自動化することが重要です。
2024年末から2025年初にかけての最新情報を踏まえて、最終的な推奨を示します。
推奨:Dokku
理由:
注意:CLI 操作に慣れる必要があります。
推奨:Coolify
理由:
注意:メモリ消費が多いため、最低 2GB RAM は必要です。
推奨:Dokploy
理由:
注意:1年未満の新しいプロジェクトで、長期運用実績がありません。本番環境での採用は十分な検証が必須です。
セルフホストPaaSの選択は、あなたの「優先順位」によって大きく変わります。
2025年は、3つのツールが異なる方向で進化を遂げています。Dokku は「枯れた安定性」を、Coolify は「実用的な成熟」を、Dokploy は「モダン機能の急速な拡充」を実現しています。
年間¥8,000〜¥50,000 程度のコスト削減と、インフラへの完全なコントロールが得られるセルフホストPaaS。クラウドPaaS の高い月額費用に悩んでいるなら、一度検討する価値は十分にあります。
あなたの状況に最適なツールを選択し、安定的で経済的なセルフホスト運用を実現してください。
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