プッシュ通知
新記事をすぐにお知らせ
🎙️ 音声: ずんだもん / 春日部つむぎ(VOICEVOX)
Noble Audio FoKus Rex5は、リスニング用途で高い音質と解像度を求めるユーザーにとって、確かに購入価値のあるハイエンドTWSです。ただし、素のチューニングはリスニング寄りに味付けされており、完全なフラットモニター志向ではないため、自分の好みに合わせてEQ調整する前提での購入を推奨します。また、K612 Proのようなオープン型ヘッドホンからの「置き換え」ではなく、外出用の「セカンド機材」として位置づけるのが現実的です。
Noble Audio FoKus Rex5の「Rex」はラテン語で「王」を意味し、「5」は5基のドライバー搭載を表しています。このネーミングからも分かる通り、メーカーは本機を**“ハイエンドTWSの王”として位置づけている**フラッグシップモデルです。
これまでのFoKusシリーズは音質に定評がありながらも、ANCや接続機能などの利便性面で課題があると指摘されていました。FoKus Rex5は、そうした弱点を補いつつ、有線IEM並みの高音質とTWSの利便性を両立させるというコンセプトで開発されました。
狙いのユーザーは以下の3つのカテゴリーに分けられます:
「Rex(王)」という名称は、単なるマーケティング的なネーミングではなく、「すべての機能において最高峰を目指す」という設計思想を反映しています。5ドライバーという複数のドライバーをTWSの小さな筐体に詰め込むことで、各帯域を専門的に担当させ、結果として高い分離感と解像度を実現しようという狙いです。
FoKus Rex5の最大の特徴は、片側あたり5基のドライバーを搭載するトライブリッド構成です。完全ワイヤレスイヤホンの小さな筐体にこれだけのドライバーを詰め込むのは、設計的に非常に難しく、同価格帯の他社製品ではほぼ見られません。
具体的なドライバー構成は以下の通りです:
1. 10mmダイナミックドライバー(1基)
2. BAドライバー(3基)
3. 6mmプラナードライバー(1基)
FoKus Rex5のスペックを見ると、**「TWSというより、有線IEM寄りの仕様」**という特徴が見えてきます:
| 項目 | 仕様 | 解釈 |
|---|---|---|
| 再生周波数帯域 | 20Hz–40kHz | 一般的なTWSは20Hz–20kHzが標準。40kHzまで対応は有線イヤホン並み |
| 感度 | 104dB @1kHz | 出力が小さいアンプでも十分な音量が得られる |
| インピーダンス | 32Ω | 比較的低いインピーダンスで、TWSの小さなアンプでも駆動しやすい |
| 出力 | 5mW | TWS基準では標準的だが、有線イヤホンと比べると限定的 |
これらのスペックは、**「有線IEMの音質基準を目指しつつ、TWSの制約条件下で最適化した」**という設計哲学を示しています。
FoKus Rex5の低域は、ユーザーレビューとメーカー表現から見ると、**「量感はしっかり出しつつ、輪郭はタイト寄り」**という特徴があります。
具体的には:
価格.comのユーザーレビューでも「低音が弱く感じる」という指摘もあり、これは同時発売のFoKus Amadeusと比較した場合に相対的に量感が少ないということを示唆しています。つまり、**「リスニング寄りながら、完全なドンシャリではない」**という立ち位置です。
フラットなモニター志向のユーザーから見ると、素の状態では低域がやや盛られていると感じるはずですが、アプリEQで調整することで、より中立的なバランスに寄せることは十分可能です。
メーカーが「極上の中音域」と表現するFoKus Rex5の中域は、**「ボーカルや楽器が自然に浮き出る」**という特徴があります。
これは、低域がしっかり出ている一方で、中域がマスクされにくいというバランスの取り方が秀逸だからです。通常、低域を強調するとボーカルが埋もれやすくなりますが、FoKus Rex5では:
という工夫により、「低域の迫力と中域のクリアさが同居」という難しいバランスを実現しています。
ただし、価格.comのユーザーレビューでは「サウンドが分析的に感じられ、音楽に没入しにくい」という指摘もあり、これは**「楽器や声が正確に分離して聞こえるがゆえに、音の一体感が失われる」**という、高解像度イヤホンに共通の課題を示唆しています。
プラナードライバーを採用したFoKus Rex5の高域は、**「クリアで伸びのあるきらびやかさを持ちながら、刺さりにくい」**という特徴があります。
これは、プラナー型ドライバーの特性(応答性が高く、瞬発力がある)と、メーカーのチューニング(高域をやや華やかに調整しつつ、ピークを避ける)の組み合わせによって実現されています。
メーカーが「楽しく洗練された」と表現するFoKus Rex5の音は、以下のように整理できます:
| 観点 | 特徴 |
|---|---|
| ジャンル適性 | EDM、ポップス、ロックなど、低域の迫力が活きるジャンルに◎。クラシックやアコースティック音楽では、やや華やか過ぎるかもしれない |
| リスニング性 | 「聴き込む」のに適した、情報量豊かで分離感の高い音作り |
| モニター性 | 完全なフラットではなく、「リスニング寄りのHi-Fi」という位置づけ |
| 調整性 | EQで大きく変わるため、素の音だけで判断するのは危険 |
FoKus Rex5に対するユーザーレビューは、音質と解像度を絶賛する声が圧倒的多数派です。その理由を分析すると:
1. 高音質・解像度への満足度が高い
「深く沈み込む低音の存在感があり、一つ一つの音の解像度も高く音質はとても良い」「高域は良く伸びる綺麗な高域で、音場も広く感じる」といった評価が多数見られます。これは、5ドライバー構成の設計がしっかり機能していることを示しています。
特に、有線イヤホンからの乗り換えユーザーや、オーディオに詳しい層からは、「TWSながらこのレベルの解像度は珍しい」という高い評価を受けています。
2. マルチドライバーの利点が実感できる
「超クリーンで楽器セパレーションが抜群」という評価は、複数のドライバーが各帯域を専門的に担当することの恩恵を示しています。これにより、楽器一つ一つが独立して聞こえ、音の立体感が増すという効果が実現されています。
3. カスタマイズ性への評価
Audiodoパーソナライズと10バンドEQという強力なカスタマイズツールへの評価は非常に高く、「調整次第で最高クラスのサウンド」「サウンドカスタマイズ性で圧倒」という声が多数あります。
自分好みに追い込みたいオーディオ愛好家にとって、この**「調整の自由度の高さ」**は非常に大きな価値があるのです。
4. 装着感と付属品への満足
「イヤーピースの種類が豊富で驚いた」「フィット感も良く、長く付けていても痛くならない」という評価から、ハード面での品質も高いことが分かります。ハイエンド価格帯の製品だけに、こうした細部への配慮が評価されています。
一方で、FoKus Rex5に対する批判的な意見も存在し、購入前に理解しておくべき課題があります:
1. デフォルトチューニングの問題
「下中域が薄め、上中域(2kHz以上)が強調されボーカルがシャープ」「低域のボディ不足」という指摘は、素の状態でのチューニングがやや癖があることを示唆しています。
これは、メーカーが「リスニング寄りながら、解像度優先」という設計方針を取ったために、「バランスの良さ」より「情報量の多さ」を優先した結果だと考えられます。
つまり、「EQ調整なしで、そのまま使って満足」というユーザーには、やや癖のある音に感じられる可能性があるのです。
2. 「分析的」に感じられるという指摘
kakaku.comのユーザーレビューで「解像度はFoKus Prestigeより高いが、サウンドが分析的に感じてあまり楽しさを感じない」「一つ一つの音が散らばって鳴っているのが気になり、音楽に集中できない」というコメントがあります。
これは、高解像度イヤホンに共通の課題で、「音が正確に分離しすぎるがゆえに、音楽としての一体感が失われる」という現象です。クラシックやジャズなど、音の融合を楽しむジャンルでは、やや冷たく感じられるかもしれません。
3. ANC・通話機能は「最高峰ではない」
「機能やANCを最重視する人には向かない」「Technics EAH-AZ100の方がANC・トランスペアレンシー・マイク品質は優秀」という比較レビューがあります。
つまり、FoKus Rex5は**「音質最優先」で、ANCや通話品質は「実用レベル」**という位置づけです。もし、ANC性能を最重視するなら、他機種の方が適切かもしれません。
4. 操作カスタマイズの制限
「左側長押し固定で変更不可」という操作面での不満も報告されており、細かいUIの使い勝手では、他モデルに劣る可能性があることを示しています。
K612 Proはオープン型のモニター寄りヘッドホンで、以下の特徴があります:
一方、FoKus Rex5は密閉型の完全ワイヤレスイヤホンで:
これら2つは**「音の方向性が全く異なる」**ため、「K612 Proの置き換え」という考え方は現実的ではありません。
K612 Proを残しつつ、FoKus Rex5を外出用セカンドとして追加するというアプローチが、最も実用的です:
| 用途 | 推奨機材 | 理由 |
|---|---|---|
| デスク作業・制作 | K612 Pro | 開放感と自然な音場が必要 |
| 長時間リスニング | K612 Pro | 装着感の快適さ、開放型ならではのラクさ |
| 外出・通勤 | FoKus Rex5 | ワイヤレス、ANC、遮音性 |
| 音場を活かしたい | K612 Pro | 頭外定位、立体感 |
| 低域の迫力を楽しみたい | FoKus Rex5 | 密閉型の低音の沈み込み |
もし、「家でもワイヤレスの気軽さを最優先したい」という場合は、K612 Proからの完全置き換えもあり得ます。ただし、以下の点を理解した上で判断してください:
あなたが「フラットなモニター寄りが好き」という場合、FoKus Rex5の素のチューニングは**「期待を下回る可能性が高い」**です。理由は:
FoKus Rex5の強力なアプリEQとAudiodo パーソナライズを使えば、「ほぼモニター寄り」に近づけることは十分可能です。
具体的には:
これらの調整により、「フラットに近い、モニター的な音」を実現することはできます。ただし、**「EQ調整前提での購入」**という前提条件があることを忘れてはいけません。
もし、「素の状態がフラットであることを最優先」したい場合は、以下の選択肢を検討してください:
FoKus Rex5の価格は:
この価格帯は、**「TWSとしては最高峰クラス」**であり、一般的なプレミアムTWSの2倍以上の価格です。
予算が限定的な場合、以下の代替案を検討してください:
1. Noble FoKus Amadeus(44,550円~49,500円)
これは、同じNoble Audioの下位モデルで、**「複数層構造の複合ドライバー」**を採用しています。
Amadeusは、「複数層構造で実質的にマルチドライバー対応」と見なすことができ、**「フラット志向でありながら、高域の超高音がしっかり聞こえる」**という特徴があります。
2. 他社のモニター寄りTWS
SonyやAudio-Technicaなど、他社のスタジオ志向モデルは、素のチューニングがより中立的である傾向があります。ただし、Noble Audio特有の「複数ドライバーによる高い解像度」は期待できないかもしれません。
FoKus Rex5が「買う価値あり」と判断できるのは、以下の条件を満たす場合です:
✅ 買う価値がある場合
❌ 買う価値が薄い場合
FoKus Rex5の購入を検討する際、以下のチェックリストを参考にしてください:
| 項目 | 確認内容 | 判定 |
|---|---|---|
| 音質志向 | 「TWSでも高い音質を求める」か | ○ならGO |
| チューニング受け入れ | 「リスニング寄りの味付けを受け入れられるか」か | ○ならGO |
| EQ調整意欲 | 「自分好みにEQを調整したいか」か | ○ならGO |
| 用途の明確性 | 「外出用セカンドとして位置づけられるか」か | ○ならGO |
| 予算 | 「62,000円以上の投資に納得できるか」か | ○ならGO |
| LDAC対応 | 「ハイレゾストリーミングを活用できるか」か | △でもOK |
| ANC重視度 | 「ANC性能は『実用レベル』で妥協できるか」か | ○ならGO |
リスニング用途で、かつ音質と解像度を重視するなら、FoKus Rex5は確かに買う価値のあるハイエンドTWSです。ただし、「素のフラットなチューニング」を最優先する場合は、試聴の上で判断するか、Amadeusなどの代替案を検討することを強く推奨します。
記事数の多いカテゴリから探す