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AI需要が半導体危機を招く—SDカード価格2倍化とスマホ市場の大転換

👤 いわぶち 📅 2026-01-02 ⭐ 4.5点 ⏱️ 15m
AI需要が半導体危機を招く—SDカード価格2倍化とスマホ市場の大転換

ポッドキャスト

🎙️ 音声: ずんだもん / 春日部つむぎ(VOICEVOX)

📌 1分で分かる記事要約

  • AI向けメモリ需要がDRAM・NAND供給を圧迫:生成AIデータセンターの爆発的需要により、2027年第4四半期までメモリ価格が高止まり。スマホ本体価格は6.9%上昇が見込まれている
  • SDカード価格が2倍に高騰:microSD Express 256GBが6,980円→25,000円に跳ね上がり、ProGrade Digitalは128GB品で+104.4%の値上げを実施
  • メーカーがビジネスモデルを転換:内蔵ストレージ課金から最小容量+拡張スロット方式へシフト。ユーザーは安いモデルを選んで後から拡張できる利点が生まれる
  • microSDスロット復活は2026年後半から:新規モデルのみが対象で、SIM統合スロット方式の実装が検討中。Appleは採用しない見通し
  • この記事を読むと:AI需要がいかに日常のガジェット購入に影響を与えているか、メーカーの対抗策、そして消費者が今とるべき判断が理解できます

📝 結論

生成AIの急速な普及は単なるテック業界の話題ではなく、私たちのスマートフォン購入戦略を根本から変えようとしています。メモリ高騰という構造的な問題に対し、メーカーが廃止していたmicroSDスロットを復活させるという対応は、消費者にとって一定の救いになる一方、SDカード自体の価格高騰という新たな課題を生み出しています。2026年後半の新機種発表を待つ前に、現在の市場動向を正確に理解しておくことが、賢い購買判断につながります。


AI需要による半導体危機—その「怖さ」の正体

昨年から「AI需要が怖い」という声が消費者から聞こえるようになりました。その不安は決して杞憂ではありません。生成AIのデータセンター向けメモリ需要が爆発的に増加する中、スマートフォンやSDカードといった私たちの日常デバイスまで影響を受け始めているのです。

この危機の本質は、単なる価格上昇ではなく、スマートフォン市場全体の構造的な転換です。メーカーのビジネスモデルが揺らぎ、消費者の購買戦略も変わりつつあります。そして、その過程で廃止されていた技術が復活しようとしているのです。

メモリ不足が招く、スマートフォン市場の危機

DRAM高騰が続く構造的背景

AI需要によるメモリ・半導体不足は、一時的なトレンドではなく、少なくとも2027年第4四半期まで継続すると予測されています。Counterpoint Researchの分析によれば、2026年第2四半期までにメモリ価格が40%上昇する可能性が高く、これはスマートフォン市場に直結した影響をもたらします。

その結果として見込まれるのが:

  • スマートフォンの平均販売価格(ASP)が6.9%上昇
  • 出荷台数が2.1%減少
  • 特に低価格帯モデルが深刻な打撃を受ける

つまり、メーカーはコスト増加をユーザーに転嫁せざるを得ず、同時に販売数量も減少するという、ダブルパンチを受けることになるのです。

半導体市場全体の成長とコンシューマー向けの冬の時代

興味深いことに、半導体市場全体は好況です。2026年の売上高は**7,722億ドル(前年比+22.5%)に達する見通しで、AI向けGPU・HBMメモリが主導しています。野村アセットの予測では、2026年半導体企業のEPS(1株当たり利益)が+42.6%**の過去最高更新を見込まれています。

しかし、この好況はあくまでAI向けメモリに限定されたものです。スマートフォンやPCといったコンシューマー向けデバイスは、供給制約と価格上昇の「冬の時代」に突入しているのです。

SDカード価格2倍化—AI需要の「怖さ」を最も実感できる事例

microSD Express 256GBが6,980円から25,000円へ

AI需要による半導体危機の「怖さ」を最も実感できるのが、SDカード市場です。任天堂公式ライセンス品のmicroSD Express 256GBは、かつて6,980円という価格で販売されていました。ところが、2025年11月から3ヶ月で劇的に値上がりし、2025年12月時点で20,000〜25,000円に達しています。

これはほぼ3倍から3.5倍という、消費者にとって衝撃的な上昇率です。

ProGrade Digitalの大幅値上げ

ストレージメーカーのProGrade Digitalは、2026年1月8日から値上げを実施します。その内容は以下の通りです:

製品容量旧価格新価格値上げ率
microSDXC UHS-II V60 GOLD128GB6,800円13,900円+104.4%
microSDXC UHS-II V60 GOLD256GB11,800円24,100円+104.2%
SDXC UHS-II V60 GOLD128GB約9,000円約18,700円+107.6%
SDXC UHS-II V60 GOLD256GB約15,000円約31,000円+106.0%

ほぼ倍額という値上げです。これは単なる商品の値上がりではなく、AI需要によるNANDフラッシュメモリ供給逼迫が、消費者の日常購買にまで波及している証拠です。

2026年春以降の価格予測

複数の業界予測によると、2026年春以降のSDカード価格は以下のシナリオが想定されています:

最も可能性が高い「中立シナリオ(60%)」では、microSD Express 256GBは22,000〜25,000円で推移すると予想されており、現状維持〜10%程度の値上がりが見込まれています。つまり、現在の高騰状態がそのまま常態化する可能性が高いということです。

ProGrade Digital自身も「2026年の半導体メモリー市場について、供給の不確実性、価格の変動が続くと予想される」とコメントしており、少なくとも2027年までこの状況は改善しないと見なしています。

メーカーのビジネスモデル転換—microSDスロット復活の背景

従来のビジネスモデルが成立しなくなった理由

ここで重要な問いが生じます:なぜ今、メーカーはmicroSDスロットを復活させようとしているのか?

その答えは、メーカーのビジネスモデルの歴史にあります。過去10年以上、スマートフォンメーカーはmicroSDスロットを廃止してきました。その理由は、内蔵ストレージの上位オプションにプレミアム価格を設定し、利益を最大化するためでした。

例えば、以下のような価格設定が典型的でした:

  • 128GB モデル:基本価格
  • 256GB モデル:基本価格 + 20,000〜30,000円
  • 512GB モデル:基本価格 + 40,000〜60,000円

メーカーにとって、ストレージ容量の増加に伴う原価上昇は数千円程度に過ぎませんが、ユーザーには数万円の追加負担を強いることができました。この差額が「ストレージプレミアム」として利益になっていたのです。

AI需要がこのモデルを破壊した

しかし、DRAM価格の高騰によって、この戦略は成立しなくなりました。メモリコストそのものが大幅に上昇すれば、その上昇分をすべてユーザーに転嫁することは現実的ではありません。ユーザーの購買意欲が低下し、出荷台数の減少につながるためです。

メーカーは以下のジレンマに直面しています:

  1. 内蔵ストレージを増やす:原価上昇で利益が減少
  2. 価格を上げる:ユーザーの購買欲が落ちて出荷台数が減少
  3. ストレージプレミアムを維持する:ユーザーが最小容量モデルを選ばず、やはり出荷台数が減少

microSDスロット復活による「三方良し」の実現

このジレンマを解決する手段として、メーカーが検討しているのがmicroSDスロットの復活です。これにより以下が実現します:

ユーザー側のメリット:

  • 最小容量(例:128GB)の安いモデルを購入して初期費用を抑える
  • 後からmicroSDカードで低コストに容量を拡張できる
  • 本体価格が上昇する中で、購買のハードルが下がる

メーカー側のメリット:

  • 最小容量モデルの出荷台数を増やせる
  • 本体の原価上昇を最小限に抑えながら、機能を維持できる
  • ユーザーの価格負担感を軽減し、販売台数を確保できる

つまり、メーカーが廃止していた技術を復活させることで、AI需要による危機を乗り越えようとしているのです。

実装時期・方式・対象機種—2026年後半から始まる市場変化

2026年後半に新規モデルで実装予定

中国のテックリーカーRepeater 002氏による報告によれば、メーカーがmicroSDスロット復活を検討している時期は早くとも2026年後半です。

なぜこの時期なのか?その理由は、スマートフォン開発のサイクルにあります。既に製造ラインに入っているモデルの全面的な再設計は、技術的にも経営的にも難しいのです。そのため、2026年後半に発売予定の新規モデル(つまり、設計段階で復活を織り込めるモデル)が対象になる可能性が高いとされています。

SIM統合スロット方式による実装

実装方式として検討されているのが、SIMカードスロットとSDカードスロットを統合した2in1スロットです。これにより以下が実現します:

  • 追加の開口部が不要:スマートフォンの薄さを維持できる
  • 設計の自由度が高い:既存の設計フレームワークの中で対応可能
  • コスト効率:新たな部品追加を最小限に抑えられる

ただし、この方式には課題があります。SIMカードとSDカードを同時に使用できないため、ユーザーは「デュアルSIM」と「ストレージ拡張」のいずれかを選択する必要があります。国内キャリアの契約形態によっては、この制約が大きな障壁になる可能性があります。

既存機種への影響は限定的

重要なポイントとして、既に販売されているスマートフォンにはmicroSDスロットは搭載されないということです。復活は新規モデルのみが対象であり、現在使用中のスマートフォンを買い替えるまで、この恩恵を受けることはできません。

Appleの戦略—iPhoneはmicroSDスロットを採用しない

Appleが採用しない理由

ここで一つの大きな分裂が生じます。Appleは、このmicroSDスロット復活の動きに参加しないとされています。

その理由は、AppleのビジネスモデルがAndroidメーカーと根本的に異なるためです。Appleは以下の戦略を取っています:

  1. 内蔵RAMの統一化:例えば、iPhone 18全モデルで12GBに統一し、価格帯による差別化を減らす
  2. 長期供給契約:SamsungやSK Hynixとの長期契約により、メモリ価格上昇の影響を最小限に抑える
  3. クラウド依存:iCloudなどのクラウドストレージサービスで、ユーザーのストレージニーズに対応

つまり、Appleは物理的な拡張スロットを追加するのではなく、内蔵容量と契約サービスで対応する戦略を取っているのです。

長期契約による価格上昇の回避

Appleの長期契約戦略は、少なくとも2026年前半までは機能すると分析されています。しかし、2027年以降は影響が出る可能性があります。その時点で、Appleがどのような対応を取るのかは不明です。

Android/iPhone市場の戦略的分裂

この状況は、スマートフォン市場におけるAndroid陣営とAppleの戦略的分裂を象徴しています:

観点Android(microSD復活予定)iPhone(採用予定なし)
ストレージ拡張物理スロット(microSD)クラウド依存
ビジネスモデル最小容量+拡張方式内蔵容量+サービス課金
ユーザー負担本体価格↓、SD価格↑本体価格↑、サービス課金↑
設計の自由度高い統一的

どちらが消費者にとって有利かは、ユーザーの使用パターンによって異なります。

残された課題と限界—microSDスロット復活の現実的な問題

読み書き速度と信頼性の問題

microSDスロット復活には、避けられない技術的課題があります。microSDカードは、スマートフォンの内蔵ストレージと比べて読み書き速度が低く、信頼性も劣るという問題です。

具体的には以下が挙げられます:

  • 速度:内蔵ストレージ(NVMe SSD相当)の速度に対し、microSDカードは数分の一程度
  • 信頼性:接触不良や物理的な破損のリスクが高い
  • 互換性:一部のアプリやゲームが、microSDからの実行に対応していない場合がある

これらの課題は、特にゲームやビデオ編集などの高速I/O処理が必要なアプリケーションで顕著です。

SDカード価格の高騰が復活の意義を半減させる

さらに大きな問題として、SDカード自体の価格高騰があります。

microSDスロット復活の意義は「ユーザーが安く容量を拡張できる」という点にあります。しかし、microSD Express 256GBが25,000円という高値で推移する現状では、この利点が大幅に減少してしまいます。

例えば、以下のシナリオを考えてみてください:

  • 従来モデル:256GB iPhone = 本体価格 + 30,000円
  • 復活後のAndroid:128GB 本体 + microSD 256GB = 本体価格 + 25,000円

一見すると、Androidの方が安く見えますが、SDカード価格の高騰を考えると、実際の節約額は限定的です。さらに、SDカード価格は今後も変動する可能性があり、ユーザーの購買判断が難しくなります。

すべてのメーカーが採用するわけではない

重要な注釈として、**microSDスロット復活はあくまで「検討段階」**であることに注意が必要です。以下の理由から、すべてのメーカーが採用するとは限りません:

  1. 設計上の制約:スマートフォンの薄型化・軽量化の流れに逆行する
  2. 信頼性への懸念:ユーザーの不具合報告が増える可能性
  3. ブランド戦略:プレミアムモデルではスロット非搭載で差別化する可能性
  4. 地域差:クラウドストレージが充実した地域では不要と判断される可能性

特に、Appleのようなプレミアム戦略を取るメーカーは、物理スロットの追加を避けるでしょう。

消費者が今とるべき判断—購買タイミングと戦略

現在のSDカード購入は「高値掴み」のリスク

もし現在、SDカードの購入を検討しているなら、注意が必要です。microSD Express 256GBが25,000円という価格は、AI需要による一時的な高騰の可能性があります。

2026年春以降の価格推移を見守ることが、賢明な判断かもしれません。特に、急ぎの用がなければ、以下の選択肢を検討してください:

  • 容量を減らす:256GBではなく、128GBで対応できないか検討
  • 時期をずらす:2026年春以降、価格が安定するまで待つ
  • 代替手段を活用:クラウドストレージ(Google DriveやOneDriveなど)で対応

スマートフォン購入は「新機種発表」を待つ価値がある

スマートフォンの購入を検討しているなら、以下のポイントを意識してください:

2026年後半の新機種発表を待つ価値がある理由:

  • microSDスロット搭載モデルが登場する可能性
  • 本体価格の上昇が一段落する可能性
  • 市場の混乱が収まり、価格が安定する可能性

ただし、現在使用中のスマートフォンが故障したり、どうしても新機種が必要な場合は、以下を考慮してください:

  • Androidを選ぶ場合:2026年後半の新機種発表を見守り、microSDスロット搭載モデルの登場を待つ
  • iPhoneを選ぶ場合:内蔵ストレージの大容量モデルを選ぶ、またはiCloudサブスクリプションの契約を検討

ストレージ戦略の転換期であることの認識

最も重要なのは、現在がスマートフォンのストレージ戦略における転換期であることを認識することです。

過去10年以上、メーカーは「内蔵ストレージ課金」でユーザーから最大限の利益を吸い上げてきました。しかし、AI需要による構造的な変化により、その戦略が成立しなくなりつつあります。

この転換の中で、ユーザーにとって有利な選択肢が生まれる一方、新たな課題(SDカード価格の高騰)も生じています。重要なのは、この市場動向を正確に理解し、自分の使用パターンに合わせた判断を下すことです。

結論—AI需要という「怖さ」への向き合い方

「AI需要が怖すぎる」という消費者の不安は、決して杞憂ではありません。生成AIのデータセンター向けメモリ需要が、スマートフォンやSDカードといった日常デバイスの価格と供給に直接的な影響を与えている現実は、テック業界の構造的な変化を象徴しています。

しかし同時に、メーカーがこの危機に対応しようとしている動きも見えます。廃止していた技術の復活、ビジネスモデルの転換、長期契約による価格安定化—こうした対策により、消費者負担は一定程度軽減される可能性があります。

重要なのは、この転換期を受動的に受け入れるのではなく、能動的に情報を理解し、賢い判断を下すことです。2026年後半の新機種発表、SDカード価格の推移、メーカー各社の対応を見守りながら、自分のニーズに合わせた購買戦略を立てることが、AI需要という「怖さ」に向き合う最善の方法です。

スマートフォン市場は今、大きな転換点を迎えています。その先に何が待っているのかは、メーカーの選択、テクノロジーの進化、そして何より消費者の判断によって決まるのです。

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